腰果Pの料理脚本 ー 渋谷「Bistro A toi(ビストロアトワ)」

腰果Pの料理脚本 ー 渋谷「Bistro A toi(ビストロアトワ)」

レストランは「舞台」であり、シェフは「キャスト」、お客様は「観客」である。
メニューは脚本とも言えるが交わされる観客とキャストの会話は、一夜限りのアドリブである。
そう、食を囲む宴とは、最高の『参加型エンターテインメント』である。つまり、脚本は、料理と対峙した一喜一憂の瞬間に生まれ変わるのだ。
今宵も、素敵な物語の世界へようこそ。

 

“ネオ・ビストロ”に相応しい、カジュアルなフレンチを

イタリア、フランスで“ネオ・ビストロ”のブームが席捲している。イタリア大使館などで配布されている『イタリア、好きITALIAZUKI』で最近私も知った言葉だ。“ネオ・ビストロ”とは、美食徹底主義のハイソサエティーな人たちに向けた高級フレンチ料理ではなく、ガストロノミーな技を駆使して、リーズナブルな価格で同じくらいのレベル感で「おいしさ」に徹した料理を出すというコンセプトの店を指す。カジュアルフレンチに近いだろうか。肩肘の張らないシンプルサービスと雰囲気で、なおかつ料理が美味しければ、言うことはないだろう。

まだ探り探りで、相手のことを知るためにする最初のデート。
眼に入るまでどんな人物が現れるか分からないギャンブル性の高い合コン。

こんなシーンでネオ・ビストロは役立ちそうなジャンルであろう。

店名の「アトワ」とは「あなたに」という意味のフランス語
総じた「客」ではなく、「あなたに」対して最高のおもてなしと料理を届けていることが伝わった。事実、ワインの好みなどを踏まえて事前相談を快く受け入れて下さった。

本格派ビストロをリーズナブルでカジュアルに食べるネオビストロの概念は、「Bistro A toi(ビストロアトワ)」で味わうとイメージがつきやすいだろう。暮らしに寄り添う素敵なビストロは、渋谷のど真ん中から発信されている。

 

Amuse ― フォアグラの最中

腰果P:この日は、偶然にもクリスマス。半個室の独立スペースを予約した。完全仕切りはないが周りの空気も、客も全く気にならない空間が用意されていた。ワインは常時70種以上は取り揃えがあるが、この日はXmasディナーコースの1本であり、スタッフのお任せのワインペアリングで始まる。

 

フォワグラの最中をお皿に置いて、隠れていたのは…

腰果P:フランス語で Joyeux Noël(メリークリスマス)のメッセージと貝殻が。
あらら、こういう演出は女子が好きそう~。次の料理、「Hors d’oeuvre ―カリフラワーのムース 季節野菜とコンソメのジュレ」にシャンパンと白ワインをペアリングして、宴がゆっくり盛り上がっていく。さて、1日の食事時間を国際比較すると米国74分に対して、フランス、日本、イタリアは、それぞれ135分、117分、114分と長い。ドイツ、英国はその中間の105分、85分である(引用:OECD, Society at a Glance, 2009)。イタリア、日本、フランスのエンゲル係数が高いのはグルメ国だからという側面が無視できないだろう。実に誇らしい。

 

Hors d’oeuvre 瀬戸内産直鮮魚 小さなタルタルとカルパッチョ

腰果P:この日の食材を聞いて、店を選択して正解だった。同席したメンバーは岡山県で有名な某食品メーカーの方々だったから。瀬戸内の新鮮な魚介が、素敵な2品で供される。魚も美味しいのだが、驚いたのが、このミニトマト。甘い。トマトは野菜の中で、世界一の消費量を占める。ギリシャが世界1で、日本は35番目くらい。消費量よりも、素晴らしい生産者がいることが、実に誇らしい。サンタのような真っ赤な野菜のグルタミン酸が、聖夜の胃袋に幸せを運んでくれている。

 

Soup フランス産鴨肉と百合根のピューレ スープ仕立て

腰果P:この季節は、忘年会が多い時期。百合根は、五臓の中では「心」のはたらきを高めて、血をめぐらす力があるので、積極的に取り入れたい。肌の乾燥を潤して、イライラ・不眠の原因となる「心」の熱をとる食事だからだ。この百合根が私は大好物。「あれ、肉のメイン料理かな?」と思ってしまうほどの食べ応えのあるスープだった。

 

Poisson 瀬戸内産直鮮魚パートフィロー包み オレンジ香るルブランソース

腰果P:地中海地方(ギリシャ・中東)では、定番のパイ生地がパートフィロ(フィロシート、フィロペストリー)だ。主な原料は小麦粉、コーンスターチ、塩。卵・バターが使われていないので、サクッと食べやすくなる。中には、白身魚の鯛。ちなみに、“タイ”と名前の一部につけられた魚は、約300種あるが、本物のタイは、10種類しかない。なかでも真鯛は、姿・色・味の3拍子そろった「海魚の王」として珍重されている。

 

Viande 牛フィレ肉のグリル トリュフ香るドフィノワグラタンを添えて ~ソースヴァンルージュ~

腰果P:気と血を補い、消化力を上げるとされるのが牛肉。素敵なクリスマスにピッタリな赤ワインのソースに合わせて、赤ワインの絶妙なペアリング。㈱モトックスさんからの仕入れが多いのが、嬉しい。私は、㈱モトックスのファンである。BIOワインの扱いが豊富で、大ファンの会社である。トータルバランスのよいコースだから、メインのお肉が来るまで適度にお腹が空いていて、美味しく最後まで頂けた。

 

Desert オペラ・ド・ジャポネ ~抹茶のオペラ~

腰果P:最後のデザートまで上品、美味しい。アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンは「メラビアンの法則」を提唱した。彼はコミュニケーションとは「言葉そのもの、語調、身振り」の3つに分けたとき、影響される割合がそれぞれ7%、38%、55%であると説いている。つまり、ヒトは発する言葉そのものよりも、身振りなどのノンバーバル(非言語)な部分から大きな影響を受けている。本日の会食相手は、来年からGOO GOO FOOが主宰するイベントに対して助言を頂けそうな中国のトップインフルエンサーやパティシィエさんたち。ちょっとカタコトになるときの中国語が愛おしかった。外国語も、料理も、コミュニケーションとしての共通点が見えそうだ。

 

編集後記

イエス・キリストの意志が美称と尊称として拝められるのは、そこに真実があったからだ。
十二弟子(使徒)の一人、イスカリオテのユダが、銀貨30枚でイエスを裏切り、処刑された。「死を以って自らの潔白の証とした」という文面を書き残して。

でも、このような文面は、潔白でない者によって記されることもあるだろう。例えば、遺言書には、必ずしも真実を記しているとは限らないと予測する。

兄弟の仲がすこぶる悪い私への愛情が、真実を隠すこともある気がしている。大切な人への想いが強ければ強いほど、死んでいく寸前でも人は心素直に生きることができないのかもしれない。愛する者と一緒に食事をしていたクリスマスイヴだから、高齢な母を思い出した。
(ちなみに、まだまだ元気に生存しております。)


では、料理の中にある真実とは何だろう?


真実とは、自分の五感と脳に記憶された経験や感受性だけが頼りである。
その店に次回も来店するかどうかは、感受性で決まるだろう。
誰にも騙されることなく、裏切られることもないものだ。

毎日が「最後の晩餐」と考えれば、フレンチの毎日よりも「Bistro A toi(ビストロアトワ)」のようなネオビストロが、私たちのカラダにも財布にも優しい気がした夜。

ご馳走様でした。

 

シナリオライター/コピーライター
腰果P(カシューP)

※取材依頼・問い合わせは、GOO GOO FOOまでお問い合わせください※料理(客単価)10,000円以上~の飲食店のみ取材を引受けさせていただいております。


食事仲間のemotional tribe代表の井上氏の記事は、コチラ

 

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