
こんにちは、カップヨーグルト研究会・向井智香(むかいちか)です。
先月は自己紹介記事へのたくさんのリアクション、ありがとうございました!!
さて、今回から数回に分けてヨーグルトの基礎を学んでいきたいと思います。
まずはヨーグルトの定義について。 途中で小難しい話になりますが、どうぞお付き合いくださいませ。
これってヨーグルト?
突然ですがクイズです。 これは、ヨーグルトでしょうか?
スーパーに行けばかなりの高確率で出会える定番商品、ダノンビオ。
お馴染みの方も多いかと思いますが、改めてパッケージを観察してみるとどこにも「ヨーグルト」とは書かれていません。
念のため、ぐるりと一周、確認してみましょう。
いかがでしょう。
やはり見当たらない「ヨーグルト」の文字。 果たしてこれはヨーグルトなのでしょうか。
発酵乳
「ヨーグルト」の記載がない代わりに、目についた単語がありました。「発酵乳」です。
ふたと側面の2箇所に明記されています。
どうやらダノンビオは「発酵乳」というものらしい、ということは分かりました。では、「発酵乳」と「ヨーグルト」の違いとは????
乳等省令の定義
日本では、乳製品の規格は「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(略して「乳等省令」)というもので定義されています。
チーズであれば「ナチュラルチーズ」「プロセスチーズ」、アイスであれば「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」と細かく分けられ、それぞれに定義が存在しています。乳製品を販売する際には、この定義に従った規格名を明記する必要があります。
しかし!
なんとも衝撃的なことに、この乳等省令には「ヨーグルト」の規格がありません。
代わりに存在しているのが「発酵乳」という言葉。
その定義は次のとおりです。
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 第2条38 この省令において「発酵乳」とは、乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したものをいう。
簡単な言葉に置き換えると、“牛乳(ヤギや羊のお乳でもOK)を乳酸菌か酵母で発酵させたトロンとしたやつで、凍らせたのもあり!” といったところです。
一般的なヨーグルトは牛乳を乳酸菌で発酵させて作るので、この定義に当てはまります。ですが、イコールではありません。
乳や乳酸菌の種類に指定がなく、幅を持ったゆるい定義のため、あらゆる“発酵された乳”がこの定義に集約されているのです。
チーズやアイスは細かくジャンル分けされているのに、ヨーグルトはジャンル分けされていないどころか、「発酵乳」の中にまとめられていて、単体の定義すら存在していません。
なので、商品パッケージに書くべき名称は「発酵乳」であり、「ヨーグルト」はあってもなくてもよい言葉。
ダノンビオのパッケージに「ヨーグルト」の単語が見当たらなかったのは、このためです。
ヨーグルトの国際規格
じゃあ結局、ダノンビオってヨーグルトなの?
せっかくクイズを出題したのですが、日本の省令にはヨーグルトの定義がないため、このままでは答えが出せません。
そこで参考にしてみたのが「コーデックス(CODEX)」という食品の国際規格。
世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)が、世界中の消費者の安全や公正な貿易を守るために設けたもので、ここにヨーグルトの定義がありました!
古くは「ラクトバチルス・ブルガリア菌とストレプトコッカス・サーモフィルス菌の2種類で乳酸発酵させたもの」とされていましたが、近年では多様な乳酸菌が使用されることから「あらゆる乳酸桿菌属と乳酸球菌のサーモフィラス菌で乳酸発酵させたもの」に更新されています。
ダノンビオで使用されている菌は全部で5種類。
乳酸桿菌属もサーモフィラス菌も含まれているため、無事にこの定義に当てはまりました!!
ヨーグルト以外の発酵乳とは
ということで、「ダノンビオはヨーグルトか?」という問いの答えは「YES」でした。
ただし日本の省令には定義がないため国際規格において、です。
とはいえ、日本で認知されている発酵乳といえばヨーグルトがほとんど。
世界にはアイラグ、ダヒ、クーミス、ケフィール、イメール、ヴィリー、ザバディなど様々な発酵乳が存在しますが、日本ではほとんど知られていません。
今年の3月にはアイスランドの発酵乳「スキール(Skyr)」が全国流通品として登場して話題となりましたが、ヨーグルト以外にも発酵乳が存在することがあまり認知されていない日本では、これもヨーグルトだと思われがち。
ヨーグルトヲタクとしては、日本の省令で「ヨーグルト」単体の規格を設けていただき、その中でチーズやアイスのような細かいジャンル分けがあれば、消費者のより積極的な選択につながるのでは・・・なんて思い描いたりする日々です。
アイスやチーズが羨ましい!
まだまだヨーグルト後発国の日本。
これからのヨーグルト文化の発展に少しでも寄与できるよう、精進いたします。
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