八王子と信州長野のテロワールを同時に感じられる、店。
樽生サーバーで酒蔵直送のフレッシュな日本酒を愉しめる、店。
八王子産の酒米を地元住民の皆さんで稲刈りして、作ったサステナブルな酒が飲める、店。
特徴や魅力を言い出せば、キリがない。注がれた純米吟醸が尽きることなく、饒舌は磨かれる。
日本酒好きには、たまらない店、そしてオーナー企業の存在が光る。
果たして、何合目に差しかかっているのだろうか。
社長の掲げている夢と浪漫が詰まった旗艦店である、酒場。海の幸をおいしく食べるための仕入れに工夫があり、海の生き物たちへのやさしさが刺身に現れている。だから、今回はこの番号を選んでみた。
目指す頂上は、「雲のまた雲の上というわけでもなさそうだよね」と認識ができる店。
てっぺんを目指すために、お客様の声を耳にしながら日進月歩するに相応しい素敵な店。
おいしい酒と料理で、私は今年初めて帰りの電車で転寝し、終電を逃して最果ての駅へ…。
そんな思い出は多く語らず、素敵な料理の数々を紹介したいと思う。
あなたと17の約束。2021年最後の記事は、八王子『蔵人舞姫』さん。
目次
長野県諏訪市の『酒蔵 舞姫』の直営酒場
門構えも、灯された明かりも、居酒屋ではなく、“明日行きたい懐石”の立ち位置。肩ひじ張らず、毎日来たくなる店。
由緒正しき歴史のある諏訪五蔵の「舞姫」直送の酒がズラり
全国的に外食では人気が高く、綺麗なお酒『翠露』
皆さんは、「諏訪五蔵」をご存じだろうか?
長野県諏訪市の甲州街道沿い、500mの間に5軒の酒蔵が立ち並んでいる。
その一帯で、最も駅から近い蔵が、酒蔵舞姫。
1894年から、地元の人たちから愛され続けた酒蔵です。霧ケ峰の伏流水や、「冷蔵保存設備」に投資をして、中小規模の蔵としては、圧巻の冷蔵への技術革新を推進している。そのお酒と最高のマリアージュが楽しめる料理が供される店が、まさしく蔵人舞姫なのである。
では、さっそく献立を見ていきましょう。
生牡蠣
岩ガキは、立派な岩手県・山田町の3年物。3年の生育をしてから出荷するにはリスクが伴うので、漁師はできるだけ早く出荷したいのが一般的。広島県は、カキフライに適した小ぶりの牡蠣を出荷することが多いが、大体1年で水揚げされている。
一方、当店の場合、大石店長の親御さんが漁師であり、「龍神丸」で“耳釣り漁法”によって牡蠣を生育させて生で供される。
耳釣り漁法とは、テグスを通して、等間隔で海に吊るす漁法だ。網に20~30個の牡蠣を入れて吊るす場合と比べて、プランクトンが配分が均一になるため、殻ばかりが大きくて、中身が小さいことも予防できて、均一化できるメリットがあるそうだ。レモンでシンプルに。日本酒に合いすぎでしょ…。
そんな美味しい牡蠣を味噌仕立てでいただける「牡蠣鍋」。冬の風物詩の牡蠣鍋だが、新鮮で生で食べられる牡蠣が使われていて、カラダが温まる一品。大変おススメな1品である。味噌仕立てで、本当に最高。
帆立のお造り
帆立も耳釣り漁をすることで、貝柱が大きく成長する。立派なサイズ感と食べ応え。北海道も有名な産地だが、耳釣り漁は一部の青森の地域を除いても珍しい。各漁港(漁協)によって組合の出荷方法を統一するそう。
「山田町は、養殖が盛んな地域で、昔は捕鯨で栄えた町だったんですよ」と大石店長。
海鞘刺し
「海鞘は副産物で、漁師にとってみれば海藻と同じようなもの。10個くらい集めて出荷することが多いのです。」と大石店長。でも、この店では鮮度の良い海鞘が少量から注文できて、店に届く。その理由は、牡蛎の棚を2つも潰して、“海鞘専用”にしているためだ。
海鞘も成長するのには3年かかる。種付け時期は小指の付け根ほどの大きさであるが、それが次第に成長して、こんなに身がパンパンに詰まった個体に。水揚げの旬は、6~7月。しかし、これだけ鮮度が良い海鞘を店で食べたことがない。
海鞘刺しをとってみれば、34年間食べ歩いてきたが、この店が、都内1位ではないだろうか。
白子焼・あん肝
白子焼が、とろける、絶品。「今年の真鱈の白子は当たり年ですね」と大石店長。
白子ポン酢もよいが、焼くと甘味が一層に増していく。粒が大きく、ひだの幅が広い。常に新しいものを市場で仕入れている、真鱈の白子は、カットの仕方にも工夫があって、ボリュームたっぷり。
素晴らしいコスパの逸品だ。形が崩れないように丁寧に焼成して、6分割でキレイにカット。水分が飛びすぎずに、ふっくらと仕上がり、適度なメーラード反応が照り輝く。ちなみに、「白子」のメニューが多いが、真鱈でなくて、「スケトウダラ」や「鮭」の白子を提供する店も多い。それらは、半値であるから恐ろしい。
さて、あん肝という前菜は、店によって味がマチマチな印象がないだろうか?
その理由は既製品の購入か、生の肝を自家製でつくっているかの違いである。缶詰や酒蒸ししたものを真空パックしている品を提供する店も多い中、当店では市場から鮟鱇を丸で仕入れて、生の肝からアルミホイルで包んでスチームコンベクションオーブンで、あん肝にする。ふっくらとした仕上がりとなる。
金目鯛・鰆の麴焼き
酒蔵舞姫の「わさび漬け」を製造している、田村食品さん。酒粕を舞姫から買い上げて、わさび漬けしている商品なのだが、その酒粕が海を渡り、沼津港の水産加工会社ともにコラボレーションしたお魚がコチラ。
酒粕の力で、さわら、金目鯛の身がほぐれて、麴付けをされて真空パックされている。ちなみに、こちらのお魚たちは、2022年1月に、オンラインショップでお酒を購入してくださった方々に、『お年玉プレゼント』キャンペーンとしてご提供する商品!!超太っ腹企画をやるので、ぜひこの機会に新酒を飲んでみよう。
公式Instagramや毎月のDMにて詳細情報は発信されるので、是非、酒蔵舞姫に会員登録しておくとよいでしょう。
↓↓↓
鹿肉のしゃぶしゃぶ / 鹿肉カットステーキ
江戸時代、四足動物を食すことを禁じていた頃。長野県の諏訪大社が免罪符を出して、貴族は四つ足の動物を食べていた。
そんな歴史背景のある長野で最も有名なジビエと言えば、鹿。高たんぱくで低カロリーなロース肉。これをしゃぶしゃぶで油を落として、かつお出汁の1番出汁でサッと茹でていただきます。
鹿肉のカットステーキ
脂の少ない、柔らかく上質なモモ肉をフライパンで塩・胡椒。肉質が良いのでシンプルな味付けがよく活きる。
この鹿肉も、しゃぶしゃぶ同様に長野県のジビエ肉を業者からの仕入れ。HACCAP認定済みの業者。
またぎさんからの直接の仕入れは衛生面で不安があるが、業者からの仕入れで安心できるから安心。
東京X(エックス)のステーキ
八王子・高月のさわり農場が開発した東京発のブランド豚肉。4種の豚をかけあわせた商標登録済みの豚肉だが、脂が甘く、さっぱりしている。飼料として。合鴨農法でつくった無農薬米が使われているだとか。酒蔵がイチ押しの酒ブランド『高尾の天狗』でも、「あいがもふれあい米」のひとごこち、きぬひかりを生産している農家さんと手をとりあって、酒を醸している。
白麗茸と信州きのこのオイスター炒め
白麗茸とは、通称「あわび茸」。白麗茸を専門で育てる『有坂きのこ園(長野県)』さんから取り寄せて、信州のいろんなキノコで旨味のユニゾン。香味となるオイスターソースが旨さを引き立て、非常に美味しい。私の中で、TOP3に入る推薦したいメニュー。
高尾の天狗の五平餅風 酒米団子
高尾の天狗の米粉を使い、株式会社アーバンの製麺工場で団子に仕立てる。そして、創価大学の生徒がプロジェクトの中でメニュー開発をした製品。まさに農商学連携をやってのけて、通常は冷凍販売。お店では、信州みそを塗り、香ばしく焼き上げることで酒の肴にアレンジしている。
信州舞姫そば
〆には、当店自慢のお蕎麦をチョイス。信州そばの定義は、“信州産のそば粉が50%含まれる”且つ“信州の工場で製造すること”である。しかし、これは信州産のそば粉50%に対して、高尾の天狗の米粉をまぶして、八王子製麺所に委託したオリジナルブレンド蕎麦。地産のハイブリッド蕎麦に、出汁を通して…ずるぽ、ずるぽ。
黄金軍鶏の上質な脂と白麗茸の出汁が相成り、グルタミン酸とイノシン酸が加わることで、上品で濃厚なお出汁になっている。この黄金軍鶏は、長野県庁からの紹介された生産者のもの。名古屋コーチン×軍鶏の掛け合わせで、服部幸雄先生が考案した名前だそう。雄、雌と味わいが少し異なり、お店の手羽先は筋肉質の弾力が強い雄を採用した。
料理に合わせて、食材の特徴を判別している点が、流石だ。
編集後記
久々に満足できる和食屋さんと出会えた。価格以上の料理、酒。素晴らしい。素敵な女将さんがカウンター越しに接客をしてくださり、礼儀正しくて一生懸命に働くアルバイトの女性スタッフたち。ジェンダーレスで働きやすそうなお店である。
高級懐石の1つ手前の気軽に入れる店。ただし、食事のクオリティーが大衆居酒屋とは雲泥の差がつく、食材のこだわり。
そんなバランス感覚のとれたお店で味わう絶品の料理と、鮮度のよい酒たち。帰る頃には平衡感覚を失っていた私。八王子のすばらしさを教えてくれた店でもあった。
感謝^^大石店長、どうも有難うございました!
取材でたっぷりをこだわりを教えてくださった、大石店長!どうも有難うございました。
毎回、美味しいです!(笑)また来年も宜しくお願い致します。
蔵人 舞姫
東京都八王子市中町10-12
050-5259-8952
八王子駅より徒歩5分
https://www.hotpepper.jp/strJ001249475/course/