みなさまこんにちは。
お米には「お父さん」と「お母さん」がいます。
通常、わたしたちが食べているお米は、同じ品種のお父さん(おしべ)とお母さん(めしべ)から生まれたお米です。
しかし、天候や日本人の嗜好の変化など、必要な品種は日々変わってゆきます。
様々な事情から、適切な「お父さん」と「お母さん」をめぐり合わせる・・・
そんな婚活が日本のあちこちで行われているのです。
今年のはじめ、日本を代表する大女優、市原悦子さんがお亡くなりになりました。市原悦子さんといえば、『まんが日本昔ばなし』のかわいい声のおばあさん。
おじいさんとおばあさんが囲炉裏を囲み、かかった鍋から木のおたまで汁をすくう。
そして欠けたお茶碗に山盛りになった白いごはんをカッカとかき込む。
なんて美味しそうに食べるのだろう。あれは、毎日わたしが食べているごはんとは別の食べ物ではないかしら。子供ながらに憧れたものでした。
市原悦子さんといえば、もうひとつの代表作が『家政婦は見た!』でございます。
セレブなお宅へ派遣され、その禁断の日常を見てしまうのです。(というか、探しているとも言えましょう・・・)
そう、人間はその言葉に弱い生き物なのです。
お米の世界はどうでございますか。
禁断のお米の婚活事情の世界へ参りましょう。
さて今回は、以前ご紹介したお米「ひとめぼれ」に続く、作付面積3位のお米。
「ヒノヒカリ」。
お母さんは愛知の「黄金晴」、お父さんはお馴染み「コシヒカリ」。
1989年に宮崎県総合農業試験場で開発されました。
東日本ではあまり聞き馴染みのないお米ですが、西の横綱と呼ばれ、九州、四国地方で主に作られているお米でございます。
美味しいお米の産地、といったら、新潟や東北を挙げる方が多いでしょう。
「九州では美味しいお米が穫れない」
以前の九州にはそんなイメージがあり、事実、美味しいお米がほとんどなかったそうです。
そこで、「コシヒカリ」産地にも負けない美味しいお米を作ろうと1979年から研究が始まりました。
暖かい九州では3月からお米を作り始め、8月には収穫ができます。
当時、8月に収穫された「コシヒカリ」は、前年穫れた新潟の「コシヒカリ」よりも美味しく、他の地域でその年の新米が穫れるまで重宝されていたそうです。
しかし、8月の暑い時期に穫れるお米は劣化が早く、そして更にはお米の保存技術が発達し、前年に穫れた新潟の「コシヒカリ」でも味が変わらなくなったのです。
8月より遅い時期に収穫ができ、且つ、美味しい。この2点を兼ね備えた品種が求めらました。
早くできる<早生>である「コシヒカリ」、これを通常の時期にできるお米、<中生>にしたいのであれば、遅くできる<晩生>をかけ合わせればよいのではないか・・・
普通はこう考えることでしょう。
ところが、掛け合わせたのは<早生>である「黄金晴」。日々の努力の経験上、得られた知識でございました。
そして生まれたのが<中生>の「ヒノヒカリ」なのでございます。
美味しさにつきましては味だけを求めて選抜すること2年。
こうした努力の結果、九州を始め、西日本を代表するお米、「ヒノヒカリ」が誕生したのでございます。
名前の「ヒノ」は西日本を表す「陽」を意味し、まさに西の横綱にふさわしいお米となったわけでございます。
そんな「ヒノヒカリ」も近年の暑さに弱く、更なる改良が求められています。
『家政婦は見た!』が『家政婦のミタ』、『家政夫のミタゾノ』と継がれてゆくように「ヒノヒカリ」も次世代のお米たちに継がれてゆくのです。
こうしている今でも、日本の未来のために日本のどこかでお米の婚活が行われているのでございます。