5月に植樹を終え、順調に生育していたブドウ樹だが、見事に病気にかかってしまった。
「ヨーロッパの乾燥した気候を好む植物を、世界で2番目に雨の多い湿潤な日本で栽培する」
上記の挑戦がどれだけ難しいかは、「品種選定から植樹まで」の記事で歴史も踏まえてご説明した通りだが、今回は身をもってそれを痛感した。
目次
ベト病の被害
ブドウ栽培でとても被害の多い病気の一つ「ベト病」。
私は14品種のワイン用ブドウを育てているが、その中でも「竜眼」「シャルドネ」がベト病に弱い。
特に、竜眼は危なく全滅の危機であった。
ぎりぎり対処が間に合いなんとか持ちこたえたが、何度も発病を繰り返し、対処がとても大変だった。
ベト病とは?
ヨーロッパ系のブドウ品種は、本病に弱い。
主として葉に発病するが、新梢や果実に発病する場合もある。
ベト病の特徴とは、はじめ表葉に淡黄色の斑紋を生じ、後に病斑裏面に雪白色のカビを生じる。
病葉は落葉しやすく、ひどく発病すると果実の成熟が妨げられる。
さらに、冬の間につるが枯れ込む原因にもなりうる。
病気の被害に対する生産者の懸念
長野へ来てから、農家(ブドウ栽培者)の方とお会いする機会がとても増えたが、誰もが心配苦労しているのが「病気」についてだ。
栽培の研修(勉強会)にも出来る限り参加しているが、その多くも「病気」についてのもの。
美味しいワインを造るための苦悩。
ワイン用ブドウの栽培はまさに「挑戦」だ。
ウドンコ病とは?
果実、穂梗、茎、葉などに発病する。葉には、はじめ小さな黄色の病斑を生じ、ついで表面に灰白色のほこり状のカビを生じる。
果実に発生した場合、病果は生育が阻害され、片側だけに発病した場合は、奇形果になる。
サビ病とは?
葉のみに発病し、はじめ針で突いた様な、極めて小さい黄色の斑点が発生する。
1~2日の後にその裏面に、輝黄色の夏胞子堆(病原菌の胞子の塊)を生ずる。
10月以降になると夏胞子は飛散して消失し、その後に黒褐色の冬胞子堆を生じ、病葉は次々と落葉する。
自然に寄り添い、殺虫剤を使用しない育て方
病気による被害が一番大変だが、害虫による食害の被害もたくさん存在する。
殺虫剤という選択肢もあるが、ここでは使用しないことに決めている。
「農業は自然あってのもの」
地球が長い年月をかけて形成した、この生態系に寄り添って農を営んでいきたい。
もともと自然があったこの地に、ブドウ樹を植えた時点で不自然な事をしてしまっている。
逆にこの地に住む彼らを理解し学ぶべきだと思う。
コウモリガとは?
コウモリガの成虫は8月中旬~11月上旬に羽化し、夜間に飛しょうしながら空中から多数の卵を産み落とす。
地上の卵は、そのままの状態で越年するが、翌年の5月頃にふ化し、幼虫が付近の草木に食入して発育する。
その後、ブドウに移動し食入加害する。
コガネムシとは?
幼虫の被害と成虫の被害があり、成虫の被害は葉を葉脈だけ残して網目状に食害するため生育が損なわれる。
幼虫の場合は根が食害され、食害された根からの養分の吸収ができなくなり生育悪化を引き起こす。
コガネムシが大発生すると、苗だけでなく樹木でも枯れることがある。
スズメガとは?
幼虫が野菜、草花、樹木などの葉を食べる。
若い幼虫のうちは食害がわずかで目立たないが、成熟するにつれて食欲がおう盛になり、短期間に周辺の葉を、枝や茎だけにするまで食べつくし、体が急激に大きくなる。
幼虫は成熟すると5~10cmくらいになるイモムシで、腹部の末端に角のような突起を持つのが特徴。
経験談
自分の未熟なブドウ栽培に反省。
順調に苗が生育していたことに油断し、発病に気付くのが遅れ、全てが後手に回ってしまった。
しかし、これを良い経験として、今後ブドウ樹1本1本をきちんと管理し見守っていくことが出来るよう、気を引き締めてブドウ栽培を行っていきたい。
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