こんにちは、栄養士・食育栄養インストラクターの片桐佑香です!
【受け継ぎたいばあちゃんの知恵】は、“食の多様化が進む中でも、10年後も20年後も、ずっと受け継がれて行けば素敵だな”と感じる「ばあちゃんの知恵」が詰まった日本の伝統的な“美味しいもの”を、漬物作り・味噌作りなど、手仕事が大好きな私がご紹介していく企画です。
お盆が過ぎ、朝夕少しずつ涼しくなり、過ごしやすい気候の日も増えて来ましたね。今年のお盆休み、皆さんはどのようにして過ごされましたか?田舎への帰省、キャンプ、海水浴・・・。毎年定番の過ごし方がある家庭も多いと思いますが、今年はいつもと違った過ごし方をした方が多いのではないでしょうか。
今年はコロナ禍で実家への帰省やお墓参りは出来ませんでしたが、都内のお寺にお参りしたり、巻き寿司を作ったりしてお盆の心を味わいました。
我が家は、親戚みんなでばあちゃんの家に集まり、持ち寄ったピザやフライドチキンなどのごちそうや、ばあちゃん手作りの巻き寿司やそうめんを食べるのが定番です。そしてたらふく食べ終わると近所の河原へ行き、兄弟や従兄弟たちもみんな大人になった近年でも、みんなで花火をして、子供に返ったように大はしゃぎします。
そして、お盆や特別な日にばあちゃんが作ってくれる“巻き寿司”。これには必ず、甘辛く煮た手作りのかんぴょうが入っています。子供の頃、お寿司の中から先にかんぴょうだけを抜き出して食べてしまうくらいこの味が大好きで、今でも食べると懐かしさを感じます。今回は、そんな「かんぴょう」の作り方をご紹介したいと思います!
目次
「かんぴょう」とは?
突然ですが、「かんぴょう」が何から出来ているか知っていますか?巻き寿司やちらし寿司の具材、ロールキャベツの結び紐として使われている身近な食材ですが、その原料や作り方について知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
かんぴょうは、“ユウガオ”という、ひょうたんに似たウリ科の植物の実から出来ています。花の種類にも“夕顔”がありますが、それとは別物です。ユウガオには、20~30㎝の細長い形の“ナガユウガオ”と、丸い形をした“マルユウガオ”があり、どちらのユウガオでもかんぴょうを作ることが出来ますが、市販品の多くは“マルユウガオ”から出来ています。ユウガオを紐状にむいて、乾燥させたのが「かんぴょう」です。
都内のスーパーではあまり見かけませんが、私が生まれ育った信州ではナガユウガオがよく採れます。うちのじいちゃんも毎年ナガユウガオを栽培していて、ばあちゃんが煮付けやみそ汁にしてよく食べさせてくれました。柔らかく、ふんわりとした食感がとても美味しいです。
たくさん採れた日には、じいちゃん・ばあちゃんが一つ一つ丁寧にむいてベランダに干し、かんぴょうを作っていました。私も何度か手伝いをした思い出があります。干したばかりの時は瑞々しくピンピンしているのに、次の日になるとカラカラに乾燥してまるで小さくなってしまうことを、幼少の頃は少し切なく感じていました。
かんぴょうは干すことで美味しさが凝縮し、保存性も増します。栄養価も優れており、腸内環境を整える食物繊維(不溶性)、骨や歯を形成するカルシウム、むくみ改善や高血圧予防に効果のあるカリウムなどが多く含まれます。これは、天日で干すことによって水分が飛び、栄養素が凝縮されているからです。美味しくヘルシーで食べるとお腹で膨らむため、ダイエット時にもおすすめの食材です。
「かんぴょう」の作り方
ユウガオが手に入ったら、半分は煮付けやみそ汁に、もう半分は「かんぴょう」にしてみるのをおすすめします。ユウガオそのものの美味しさもぜひ味わって頂きたいですが、市販品では味わうことの出来ない、肉厚で柔らかな食感の手作りかんぴょうは絶品です。私は今回、実家から送ってもらった長野県上伊那産のものを使って作りました。
「かんぴょう」の材料
約20gのかんぴょうが出来る分量
材料 | 分量 |
---|---|
ユウガオ | 1個 |
「かんぴょう」の作り方
1. ユウガオは1.5㎝幅の輪切りにする。
2. 皮をむき、2㎜の桂むきにする。刃先が種に当たるようになったら切るのをやめる(中心に行くほど種が増える。)
3.ユウガオを全てむいたら、干し野菜用ネットに入れ、1~2日しっかりと乾燥するまで天日干しする。(夜間は露が付く可能性があるため室内に取り込む。)
4.出来上がったかんぴょうは束ねて、保存袋(チャック付きのものなど、密閉出来るもの)に入れて保管する。
かんぴょう活用レシピ
かんぴょうを美味しく味わえるレシピを2種類ご紹介します。手作りのかんぴょうでなくても、市販のかんぴょうでぜひお試しください。
かんぴょうのゴマ酢和え
かんぴょうのゴマ酢和えの材料
材料(2人分) | 分量 |
---|---|
かんぴょう(乾燥) | 10g |
さやいんげん | 4本 |
白胡麻 | 8g |
砂糖 | 小さじ2 |
塩 | 2つまみ |
酢 | 大さじ1 |
かんぴょうのゴマ酢和えの作り方
1.かんぴょうは、10分ほど水に浸けておく。インゲンは筋を取る
2.かんぴょうを適量の塩で塩揉みし、水で洗い流す。
3.かんぴょうは5分ほど茹で、冷水に取り、水気を絞ったら2cm幅に切る。インゲンはさっと茹で、冷水に取り、2cmの斜め切りにする。
4.すり鉢に白胡麻を入れ、すりこ木で軽く磨り潰したら砂糖、塩、酢を入れ混ぜ合わせる。3のかんぴょう、インゲンを入れて和える。
かんぴょうのゴマ酢和えのポイント
かんぴょうの原料である“ユウガオ”の旬と同じく夏に旬を迎える“さやいんげん”と共に胡麻で和えました。甘酸っぱい味付けが、柔らかく優しい食感のかんぴょうとよく合います。夏の食卓の副菜として、さっぱりと召し上がれる一品です。
かんぴょうの甘辛煮
かんぴょうの甘辛煮の材料
材料(作りやすい分量) | 分量 |
---|---|
かんぴょう(乾燥) | 10g |
水 | 150g |
砂糖 | 大さじ2 |
みりん | 大さじ2 |
醤油 | 大さじ1と1/2 |
かんぴょうの甘辛煮の作り方
1.かんぴょうは、10分ほど水に浸けておく。
2.かんぴょうを適量の塩で塩揉みし、水で洗い流す。
3.鍋に水、砂糖、みりん、醤油を入れて火にかけ、煮立ったら2のかんぴょうを入れて火を弱め、時々混ぜながら汁気が無くなるまで煮る。
かんぴょうの甘辛煮のポイント
そのままご飯にのせて食べても美味しいですし、ちらし寿司の酢飯の具材として混ぜ込んでも美味しいです。それらの場合は食べやすいよう、1〜2cmに刻んでお使い下さい。
私はこの“かんぴょうの甘辛煮”を使って“かんぴょう巻き”を作りました。ご飯には普通のすし酢ではなく、梅の季節に青梅を砂糖・塩・酢で漬けた時に出た“梅酢”を混ぜて酢飯を作りました。梅のほのかな香りが爽やかで嬉しいです。かんぴょうは切らずに長いまま海苔・酢飯と共に巻きます。そうすることで手作りかんぴょうならではの、柔らかく肉厚な食感が楽しめます。
干すことで保存性だけでなく、美味しさも栄養価もUPする「かんぴょう」。食卓で主役になることはなかなか無いですが、あるととても頼もしい名脇役です。
もしユウガオが手に入ったら、お家で一から手作りしてみてはいかがでしょう?普段何気なく口にする食材こそ、手作りすることで“ありがたみ”が味わえ、食卓がより特別で嬉しいものに感じられると思います。