腰果Pの料理脚本 ー 銀座「呂者堂(ろばた)」

腰果Pの料理脚本 ー 銀座「呂者堂(ろばた)」

レストランは「舞台」であり、シェフは「キャスト」、お客様は「観客」である。
メニューは脚本とも言えるが交わされる観客とキャストの会話は、一夜限りのアドリブである。

そう、食を囲む宴とは、最高の『参加型エンターテインメント』である。つまり、脚本は、料理と対峙した一喜一憂の瞬間に生まれ変わるのだ。

今宵も、素敵な物語の世界へようこそ。

 

囲炉裏を囲むカウンターテーブル、10席。

2019年11月1日~正式OPENの呂者堂(ろばた)のプレオープンイベント。

 

今宵集まったメンバーはタレント、フリーアナウンサー、デザイナー、料理研究家、アーティスト。
兼務して、皆さん「食」に精通しているから、面白い。

 

まず、伊藤社長から店のコンセプトやストーリーを伺う。漁獲量1位(平成29年)の三重県では、初夏から産卵保護のために禁漁される。10月1日(一部9月16日)が解禁日であり、冬の味覚の代名詞であるが、その三重県産の伊勢海老が中心に、コースが組み立てられるようだ。

「伊勢海老×炉端焼き」の専門店である。

料理長の佐藤店主から料理説明。コースは全3種。

 

呂:8,000円
者:11,000円
堂:13,000円

 

本日は、スタンダードな【者の食】を頂いた。ちなみに「呂者堂(ろばた)」は、決して当て字でなく実際に使われていた並びである。日本語の美しさを感じる店名だ。

 

 

前菜付

前菜4種

 

牡蠣と春菊のお浸し

炭火焼き芋 ぽてとさらだ

伊勢海老出汁の茶碗蒸し

蒸しあん肝 蜜柑ポン酢和え

 

腰果P:石川県の能登半島の野菜を使用。葉が柔らかい春菊に出汁を2回含ませ、予め火を通した牡蠣(厚岸市産)と合わせる和の真骨頂を感じた。

 

炭の薫りを甘藷が纏い、ゆでたまごもアクセントになる上品なぽてとさらだも食べやすい。

 

伊勢海老の殻を出汁に活かし、茶碗蒸しの卵と香りが、鼻孔をすり抜ける。
茶碗蒸しは、伊勢海老のアスタキサンチンで薄っすら表面が朱色に染まる。香りは伊勢海老。
合わせるは、広島県の日本酒スパークリング「嘉」。素敵な字のsake。

 

蒸しあん肝は、固まる直線で止める火入れのセンス。蜜柑ポン酢で甘味が残る。

 

 

 

「国産」にこだわる酒、料理

日本酒と料理

 

ここの食事は材料を「国産」にこだわる。
そのため、ワインも日本酒も、国産がリストに並び、ドリンクリストから新しい発見とワクワク感がある。

 

 

 

刺身 

お刺身

 

伊勢海老と旬鮮魚のお造り

 

 

腰果P:伊勢海老はすべて三重県産であるが、魚も漁師さんから一緒に買いつけする。
今宵は、シマアジ、環八、真鯛、石鯛の4種。

 

グルテンフリーランスの私は、刺身を食べる際は一切醤油をつけない。
それでも、魚のアミノ酸と適度にのった上品な脂が舌を嘗めた。美味しい。

 

 

 

囲炉裏焼き(魚)

済み

 

伊勢鮑の炭火焼き 肝醤油のソースで

 

 

腰果P:鮑は蒸しあげてから炭火で一気に焼き上げる。この大きさの鮑が1人、1個。

 

原価計算、大丈夫だろうか。
「コスパ」という言葉は稚拙であまり使いたくないが、なんとも贅沢な食材ラインナップ。

 

鮑の火入れは絶妙で、肝醤油のソースが日本酒を更に進ませる。

 

 

 

手巻き、汁物

手巻きと汁物

 

伊勢海老の天むす手巻き 伊勢海老のお味噌汁

 

 

腰果P:最強の「天むす」である。生で食べられる伊勢海老を天ぷらにして、丁寧に雲丹を乗せていく。海苔を炭火で一旦サッと炙り、パリパリの状態にするキメ細かい配慮。

 

名古屋名物として知られる天むすだが、実は三重県津市の「千寿」という食堂が発祥だと言われている。
奥様がご主人の昼食に握られたのが始まりだそうだ。つまり、元祖の天むすは伊勢海老だったかもしれない。

 

合わせるは、伊勢海老の頭で出汁をとった味噌汁。これがまた濃厚。
塩分をもう少し減らした方が、伊勢海老らしさが料理の中で伝わると感じた。

 

 

海老料理

 

 

 

囲炉裏焼き(伊勢海老、野菜)

伊勢海・囲炉裏焼き

 

名物 伊勢海老一本 炭火焼きと金沢能登自然野菜焼き

 

 

腰果P:あらあら、この光景は珍しい。TOP写真は、まるで伊勢海老のブレスト会議風景。「やっぱり会議は、FACE TO FACEが一番だよね」なんて声が聞こえてきそう。

 

1本丸ごと贅沢に焼き上がり身も柔らかく、甘みが刺身より増していた。
この料理は、是非温かいうちに食べて頂きたい。
まずはそのまま、そしてサイドの卵黄ベースにしたソースが非常に合う。このソースだけ商品化できそうなくらい美味しい。

 

 

 

囲炉裏焼き(肉)

鹿児島県産 黒毛和牛イチボの炭火焼き

 

鹿児島県産 黒毛和牛イチボの炭火焼き

 

 

腰果P:和牛イチボは鹿児島A5ランクの牝牛。「牝牛は融点が低く、繊維質が細かいんです」と伊藤さんは教えてくれた。雌牛とは未経産牛、つまり出産をしていない牛である。

雌牛の方にはカシューナッツ同様に“不飽和脂肪酸”が多く含まれるから、アスリートの私にとってもありがたい。融点が低いということは、口の中でもとろけるような味わいが強くなる。

和歌山県の備長炭で焼き上げて20分、案の定、舌触りがまるで絹ごし豆腐のよう。素晴らしい。
熱伝導率が良いのでオーブンとはまた違った火入れがある。
無農薬・無肥料で栽培した「あんがとう農園」のまこも茸が添えられる。

 

 

 

食事・甘味

伊勢海老出汁の濃厚和風りぞっと

 

伊勢海老出汁の濃厚和風りぞっと

爽やかなゆずのシャーベット

 

 

腰果P:濃厚の言葉がこれほど似合うリゾットがあるものだろうか。プリモピアットで供されるリゾットだが、日本人はチョットだけ最後に〆が欲しい。そんな胃袋を支える最適な量の〆御飯。

 

チーズの量も微量であるから、伊勢海老の味が勝つスペシャリテ。最後の甘味で、口をさっぱりさせて、終了。19:00スタートで22:30解散の3時間半のコースだったが、時を忘れてしまう空間があった。

 

 

 

編集後記 + 地図の解読が苦手な方へ

参加者集合写真

 

店の場所ですが、TOKYU PLAZAからまっすぐ道なりに行って、ダイヤモンド交換所の手前の道を右に曲がり、道なりで到着。「みゆき通り」でないので注意!
野村ビルの2階。私は完全に迷って、佐藤店主を店の外に出させてしまいました!

 

さて、伊勢海老漁には3パターンあるそう。


1、海女さん獲る
2、網で魚+伊勢海老を獲る
3、網で伊勢海老を単独で獲る

 

この中で、最も高値で取引されるのが、1。
足が取れたりせずに、綺麗な状態を保てるからだだそう。
海女さん減らさないためにも、それが素敵でしょう。

 

※取材依頼・問い合わせは、GGFまでお問い合わせください。
※料理(客単価)10000円以上~の飲食店のみ、取材を引受けさせていただきます。

食事仲間のemotional tribe代表の井上氏の記事は、コチラ

腰果P

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