フランス家庭料理研究家の竹本です。日常に取り入れて楽しめるフランスの家庭料理や生活文化をご紹介しています。
エコをテーマに話を・・・と構えてはみたものの、あまり固い話は苦手なので、毎日の暮らしからエピソードをお伝えしたいと思います。
最初は生活に欠かせない「お買い物」の話。
目次
フランスの「量り売り」システムとは?
フランスで暮らす人も他の多くの国と同じく、日常の買い物の中心はスーパーや街の商店です。私も毎日のように行きましたが、現代の日本と大きく違うのは「量り売り」が基本になっているところです。
パリの街角の青果店。「◯kgあたりいくら」の案内が下がっています。
野菜や果物、店によってはシリアルや洗剤なども量り売りで売られているのですが、しばしばトマト1個、苺1粒から買うことができます。
日本の袋売りの野菜に慣れていたので最初は面食らいましたが、いざ慣れると色々な面で「ちょうど良さ」を感じるようになりました。
何よりも素晴らしいのが、食材を使う分だけ買うことができるので、新鮮なうちに使い切ることができるところ。
必要以上に食品を買い込んでしまって、気がつかないうちに下の方で野菜を腐らせてしまって、「あーあ」ということ、ありませんか?そのうえ冷蔵庫が小さい一人暮らしの人にとって、大袋の野菜はスペースも取るので、なかなか手を伸ばしにくいところがあります。
でも量り売りなら必要な分を必要な分だけ買えるので、この悩みとは無縁でした。
量り売りの良いところって?
次に、量り売りすることによって、サイズを理由に売れ残る野菜も少ないこと。
「1個あたりいくら」という売り方だと、できるだけ大きいものを選びたくなるのが人情というものです。
そうなると小さな野菜が売れ残ったり、「残り物」を買わないといけない不満を感じたり。でも量り売りであれば、小さな野菜を好んで買う人もいます。
最後に、食材を「見て、選んで、買う」。
このこと自体に、ただ袋に入った野菜を買う以上の満足感があります。
私の感想になってしまうかもしれませんが、カゴいっぱいに盛られた野菜の中から、今日の栄養にする野菜を選ぶということ自体が、とても贅沢なことのように感じます。
同じように見える野菜も、よく見ると実に個性的です。
少量から買えるので、初めて見る野菜をちょっと試すことも簡単。
例えばフランスには赤い人参の他に白い人参、紫の人参と本当に色々な様々の人参がありますが、袋売りでは試すということは難しくて、手が出せなかったかもしれません。1本から買えることで様々な食材に触れることができました。
ちなみにリヨン名物の赤いプラリネも計り売りで買えます。
もちろんチーズも。「このくらい!」と指で厚さを示してお願いすると、少しの量からでも量り売りをしてくれます。
この量り売りシステムは、週末のマルシェでも同じです。
スーパーと違うのは生産者が直接販売に来ていることも多いので、オススメを聞いたり美味しい食べ方を教えてもらいながら買うことができること。
大体のマルシェは毎週開催されているので、時には仲良くなったお店の人が「しっかり食べな」とおまけで少し多めに入れてくれたりするようなこともあって、人とのつながりの温かさを感じていました。
そして生産者と距離が近いので、「食べものを無駄にしたらいけない」と自然と責任感を感じるような、そんな気持ちになっていました。
頭ではわかっていても、つい無駄にしてしまう野菜や果物。でも一つの野菜に生産者の労力や工夫があることを目の当たりにすると、ちょっと萎びてもなんとか無駄にしない方法を考えたり、そもそも必要以上に溜め込まない「ほどほど」の心地よい暮らしが身についていきます。
現在の日本では、量り売りシステム自体が主流になることはないかもしれませんが、「自分の必要な分」を「必要なだけ」手に入れて「溜め込まない」ようにする。
それを意識するだけで冷蔵庫も頭の中も身体も家計も、すっきりと整ってくるはずです。
今回のレシピは今が旬の梨を使った「和梨のタルトタタン風」。
生で食べるのが美味しい果物ですが、余らせてしまったらタルトにして楽しみませんか。じっくり火を入れて、果物の甘さを凝縮。使うお砂糖は最小限に抑えました。生の梨とはまた違うさっぱりとしたおいしさの発見があるはず。市販のクッキーを使った簡単仕様でお伝えします。
和梨のタルトタタン風のレシピ(耐熱容器2個分)
材料 | 分量 |
---|---|
和梨(幸水や二十世紀など) | 1個 |
砂糖 | 大さじ2(仕上げに別途小さじ2) |
甘さ控えめのクッキーかビスケット | 2枚 |
バニラエッセンス | 適量 |
バターやスプレッド(好みで有塩でも無塩でも) | 小さじ2 |
つくりかた
ビスケットを砕いてバターやスプレッドと一緒に合わせておく
梨1個を写真のような大きさに切り、砂糖大さじ2と水約100mlと一緒に20分ほど弱火で煮る。
水分がなくなって写真のような色になったら、仕上げの砂糖小さじ2と、水約大さじ1を加えてトロッとした飴状になるまで軽く煮詰める。
できるだけ隙間ができないように耐熱容器に敷き詰める。
砕いたビスケットを敷き詰めて上からラップなどを敷き、すりこぎなどでギュッと押して空気を抜く。
180度に余熱したオーブンで15〜20分ほど焼き、粗熱を取ったら冷蔵庫でしっかり冷やす。
縁をナイフなどで剥がしてからひっくり返します。
生クリームなどを添えて完成。
りんごのタルトタタンよりも歯応えと酸味のある食感に仕上がりやすいです。
梨に限らず果物は砂糖で煮てコンポートなどにしておくと日持ちするので、たくさん果物があって食べきれない時は、煮てしまうというのもひとつの手です。工夫して無駄なく美味しくいただきましょう。
フランス家庭料理研究家
竹本ともこ