昨年の2019年5月に植樹を終えているが、今年は新たに約20品種を極少量、追加で試験栽培用に準備した(挿し木・3品種、接ぎ木苗・18品種)。
「日本の気候風土に合う品種は何なのか…?」日々、ブドウ栽培を学んで行く中で、大きな疑問に直面している。
自分だけではなく、国内でブドウを栽培している全ての人が持つテーマかもしれない。
目次
準備した試験栽培用品種
日本固有品種
•甲州
奈良時代から平安時代(710~1185)にかけて、シルクロード経由で山梨県勝沼町に伝わったとされる日本固有品種(接ぎ木)
アメリカ系品種 / 欧米雑種
•主に生食用に栽培されている品種12種類
病気に強く、アロマのある品種が中心(全て接ぎ木)
交配品種
- モンドブリエ:シャルドネ × カユガ・ホワイト
- 甲斐ブラン:甲州 × ピノ・ブラン
- マスカット・ベリーA:ベーリー × マスカット・ハンブルク※日本固有品種にも登録されている
- 山ソービニヨン:山ブドウ × カベルネ・ソービニヨン
(全て接ぎ木)
ヨーロッパ系品種
- グロ・マンサン:フランス南西部が原産地。湿度、病気に強く、熟しても酸味を損なわない。
- アルバリーニョ:スペイン イベリア半島の北西部が原産。皮が厚く湿度、病気に強く、酸味が豊富。
- ケヴェルツトラミネール:イタリア北部が起源、フランスのアルザスが主な産地。非常に強いアロマを有する。
(全て挿し木)
※昨今の苗木不足の中、手に入る品種から選択
(挿し木、接ぎ木については記事Vol.9「~品種選定から植樹まで〜」で説明しています)
ブドウ品種の分類
世界のブドウは分類学上、ヨーロッパ系品種(ヴィニフェラ)と米国品種(ラブルスカ)に大別される。
ヨーロッパ系品種は、乾燥して降雨の少ない小アジア地域が原産であり、アメリカ系品種は降雨が多く、冬は寒冷な北米の東北部が原産地である。ヨーロッパ系品種とアメリカ系品種を交雑させたものを欧米雑種という。
現在、日本で主に栽培されているブドウは品種群は、国内で交配された欧米雑種であり、降雨の多い日本の気候でも安定栽培が可能になっている(主に生食用)。
ちなみに、世界のブドウ全生産量の約70%がワイン用、25%が生食用であるが、日本は真逆で、生食用が約90%、ワイン用が約10%程である。
ワインにした場合のそれぞれブドウの特徴
日本固有品種
日本で栽培歴史があり気候風土に適している(生食•ワイン用)
アメリカ系品種 / 欧米雑種
耐病性・耐寒性に優れ、日本の高温多湿な夏や、寒さの厳しい土地にも適し栽培しやすいが、特有の香りがワインに適さないとも言われる(主に生食用•ワイン用)
交配品種
耐病性・生産性・品質を高め、日本での栽培を可能にする為に交配されたが、ワインとしてはヨーロッパ品種に劣るとも言われる(生食•ワイン用)
ヨーロッパ系品種
耐病性•耐寒性に弱く、日本での栽培は困難だが、小粒、高糖酸度、香味成分豊かで高品質なワインを造るのに向いている(主にワイン用)
※全てのブドウがいずれかに該当するとは限らない。
品種の選定基準
ブドウ栽培において「気候」と「土壌」が大事なのは言うまでもないが、特に「気候」は、人間の手で変える事が出来ないため、より考慮しなければいけない部分である。
世界で2番目に多い降雨量、湿潤、梅雨、台風、それに伴い発生する多種病気、生長管理など、ブドウ栽培が難しい日本。
栽培品種を選定する上で考えている事は、栽培と醸造の両面から、耐湿耐病性、栽培の難易、早生晩生、樹勢収量、酸度糖度、品種特性、アロマなど多岐にわたる。
それぞれ品種の個性を見定めながら今後、挿し木から接ぎ木へ植え替えるタイミングまでに、この地で最適な品種を見つけていかなければならない。
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