こんにちは、栄養士・食育栄養インストラクターの片桐佑香です!
【受け継ぎたいばあちゃんの知恵】は、“食の多様化が進む中でも、10年後も20年後も、ずっと受け継がれて行けば素敵だな”と感じる「ばあちゃんの知恵」が詰まった日本の伝統的な“美味しいもの”を、漬物作り・味噌作りなど、手仕事が大好きな私がご紹介していく企画です。
厳しい冬が過ぎ、最近はぽかぽか陽気が増えてきましたね。“寒さ暑さも彼岸まで”なんて言いますが、まさにその通り。桜もキレイに咲いて、「春」って感じがしてきました。毎年恒例のベランダ菜園も、そろそろオープン間近。次の休みにでも、土作りを始めようかと思っています。どんなハーブ・野菜を育てようか、どうやって食べようか、ここ最近、空き時間を見つけては、ワクワクしながらそんな計画を練っています。
野菜といえば、スーパーに美味しい春野菜たちが続々と並び始めましたね。春キャベツ、アスパラ、新玉ねぎ・・・。春野菜って、どうしてこんなにも甘みがあって、美味しいものばかりなんでしょう。特に春の「かぶ」は、生でもパクパクと食べられるほど肉質が柔らかく、とっても美味しいんですよね。食べやすく切って、そのまま味噌を付けて食べても充分美味しいですが、今回は私の大好きな「漬物」のレシピをご紹介!
「かぶの漬物」は、数あるかぶ料理の中でも、私が一番大好きな調理法です。かぶが採れる時期は、ご飯の時も、お茶の時も、必ずばあちゃん家の食卓にありました。ポリポリだけどちょっとしんなりしてて、しょっぱくて、ちょっと酸味があって、クセになる味。食べ親しんできた味です。
「漬物」の良さは、野菜本来の美味しさが凝縮・熟成して、深みのある美味しさに化けるところにあります。小さい頃は食卓にあるから何となく食べる、という感じでしたが、大人になるに連れてこの良さが分かるようになりました。ばあちゃんや母との会話の中で、作り方を聞いているうちに、いつの間にか、自分でも、おうちで漬けるようになっていました。自分で漬けると、味や発酵の加減が調節出来て、自分好みの味にカスタマイズ出来ます。それが自家製漬物の楽しいところなのです。
今回のレシピでは、しっかりと発酵させて、酸味の効いた漬物に仕上げます。しっかりと発酵させることで、体に嬉しい効果も!“漬物はあまりやったことがない”という方でも、気軽に作れるレシピになっています。ぜひ一緒にやってみましょう。
目次
かぶについて
かぶは“春の七草”の1つ。“スズナ”という呼び名で、聞いたことがあるかも知れません。旬は春と秋の2回あります。“春もの”と呼ばれるかぶの旬は3月〜5月で、甘みが強く柔らかいのが特徴です。
種類は、赤かぶや聖護院かぶなど様々ありますが、スーパーでよく売っている白いかぶは“小かぶ”という種類で、柔らかくて食べやすいのが特徴です。(上の写真が子かぶ)
根っこの部分は、スープやソテーなどに調理して食べることが多いと思いますが、“葉の部分”、捨てていませんか?実はそれ、もったいないんです。
かぶの葉にはβカロテンが豊富に含まれます。βカロテンは体内でビタミンAに変化し、肌の調子を整えたり、喉や鼻などの粘膜を健康に保ち、抵抗力を高める働きがあります。特に今の時期は、花粉によって知らず知らずのうちに肌や喉・鼻が荒れてしまいがち。花粉症の人もそうでない人も、意識して摂って欲しい栄養素です。なので、ぜひ葉も一緒に調理してみて下さいね。火を通したり、漬けたりすると食べやすく、意外とクセも少なくて美味しく食べられると思います。
もちろん、根の部分も栄養豊富。女性に嬉しい栄養素、ビタミンC・カリウムなどが含まれまれています。ビタミンCは、体やお肌の老化防止、美白に効果が期待できます。カリウムは、体内の塩分を排出させ、むくみを防止してくれます。
美味しくて栄養豊富な、春物のかぶ。ぜひ余すところなく味わってみて下さいね。
乳酸菌発酵について
“キムチをしばらく冷蔵庫に入れて置いたら、酸っぱくなってた”なんて経験はありませんか?これは、乳酸菌によって発酵が進んだからです。
乳酸菌とは、炭水化物や糖を消費して、“乳酸”という酸を作る微生物です。ヨーグルトやチーズに乳酸菌が多いのは、よく知られていますね。これらに含まれるのは、“動物性乳酸菌です。
それに対し、キムチや漬物、味噌などの植物性の食品に生育する乳酸菌を、“植物性乳酸菌”といいます。植物性乳酸菌は、自然界という過酷な環境下でも耐えることが出来るため、生命力は動物性乳酸菌の3倍以上といわれています。なので、生きたまま腸まで到達することが出来、人にとって次のような嬉しい効果をもたらしてくれます。
1つは整腸作用です。善玉菌である乳酸菌が腸内に増えることにより、腸内環境が整い、便秘解消などに効果があります。
もう1つは、免疫力向上。人の免疫細胞の70%は、なんと腸にあると言われています。そのため、乳酸菌によって腸内環境が整えば、免疫力を向上させることが出来ます。
しかし残念ながら、乳酸菌は1度にたくさん摂ったからといって効果が出るものではありません。便秘を解消したい方、免疫力を向上させたい方は、毎日コツコツと摂取するようにしましょう。
かぶの乳酸しょうゆ漬けのレシピ
漬物作りって、なんとなく大変そう・面倒くさそうなイメージはありませんか?確かに、たくさんの量を作る場合は、専用の桶や重石が必要になり重労働かも知れません。けれど、“保存袋”を使えば漬物は簡単に作れます!食べ切りサイズで作れるので、おうちで楽しむのにはピッタリです。乳酸発酵させることで、美味しくて、しかも体にも嬉しい漬物に仕上げます。
材料 | 作りやすい分量 |
---|---|
かぶ(葉付き) | 小ぶり5本(1㎏) |
醤油 | 大さじ5 |
みりん | 大さじ1 |
作り方
1.かぶはよく洗って、葉の部分と、根の部分に切り分ける。
2.葉の部分は、4cm長さに切る。根の部分は、茎の付け根・ひげ根を切り落とし、縦半分に切ってから7mm幅に切る。
3.保存袋に2を入れ、醤油・みりんを加えて、軽く揉み馴染ませる。
4.空気を抜きながら、しっかりと口を閉じる。折り畳んで、口が上になるようにタッパーなどの中に入れる。上に一周り小さいタッパーを置き、1㎏くらいの重石(水の入ったペットボトルや、油のボトルなど)を置いて、冷暗所で3〜4日置けば完成。
途中で汁やにおいが漏れてしまわないよう、保存袋は厚手のものを使用するようにして下さい。
袋を開けると、お醤油と酸味のある香りがプワーっと広がります。
この漬物、食べだしたら本当に止まらないんです!食べ過ぎて喉が渇かないように注意してくださいね。乳酸菌による酸味と、熟成された旨味がとてもクセになります。日本茶や、白ご飯との相性が抜群です。出来上がったものは冷蔵庫で保管し、1〜2週間日持ちします。
レシピのポイント
作り方は、切って保存袋に入れておくだけ。これなら夕ご飯の支度の合間などに、ちゃっと仕込むことが出来ますよね。そして1度漬けてしまえば、後はじーっと待つだけ。最初は硬くて真っ白なかぶですが、1日・・・、2日・・・と経つに連れて、じっくりとお醤油の色が染み込んでいき、いかにもパリパリとしていて、早く食べてみたい!となる見た目へと変わっていきます。この変化の過程も観察してみると、生き物みたいで何だか癒されるんですよね。
ポイントは、寒すぎない冷暗所(15度前後)に置くこと!普通、発酵タイプの漬物は2週間以上かかってしまいますが、このレシピだと3〜4日で深い味が出せちゃいます。3日目には酸味が出てきて、4日経つと更に酸っぱくなってきます。好みに合わせて漬ける期間を決めて下さいね。
余ったら、お茶漬けにしてもとっても美味しいです。ほっかほかのご飯に、刻んだかぶの漬物、もみ海苔をのせ、あつーいお茶を注ぎます。お好みでわさびを入れてもいいですね。朝ご飯にいかがでしょう?漬物の旨味と酸味が効いているので、食欲がない朝でもさらさらと食べられると思います。
発酵食品で、体にも嬉しい「かぶの乳酸しょうゆ漬け」。市販のかぶの漬物では、発酵していないものも多いので、やっぱり手作りがおすすめ。ぜひ、自分好み酸味に仕上がる様、漬ける期間を調節して、味を楽しんでみて下さいね。