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フードロスとの戦い
Photo by Ali Sattarpour フランスは素晴らしい食材に恵まれた豊かな国。
「美食の国」と呼ばれたのが先か、フランス人がグルメになったのが先か。イメージに違わずフランス人は美味しいものの話が大好きです。だからこそ、食品に関わるエコの話題には、多くの人が関心を持っています。
とりわけ一般の人の関心が高いのは、生活に密接な「フードロス」のこと。
世界の人口が増え続ける一方で、先進国を中心に食糧が大量に捨てられているフードロスの問題は世界中で課題になっています。世界で生産された食糧の40%に当たる25億トンの食糧が捨てられているという試算もあります(WWF調べ)
食糧がどのタイミングで捨てられているかを見ると、その約半分が「農場」そして30%以上が「小売と消費」。
フランスはというと、残念ながらフードロスは多い方の国で、国民1人あたりのフードロスの量は世界で2番目に多いという試算もあります。
2016年には年間で1000万トンもの食糧が捨てられているというデータも発表されました。EU最大の農業国で、食糧が豊かで手頃ということの裏返しでもありますが、この数字は多くのフランス人の「このままではいけない」という危機感に火をつけ、この年から大型スーパーでの廃棄が禁止されました。
いまフランスのスーパーで出た余り食材は、生活に困った方への無料配布や、飼料などへのリサイクルに回されています。
合言葉は「アンチ・ガスピヤージュ」
2013年リヨン バゲットを片手に歩く男の子たち。フランスの食卓に欠かせません。
私はちょうどこの2016年頃にもリヨンに居ましたが、「アンチ・ガスピヤージュ」(フランス語で「無駄をやめよう」)の標語を街中でもメディアでも本当によく聞くようになり、食べ物を簡単に捨てない工夫を誰もが始めるようになりました。
例えばフランスの食卓に欠かせない「バゲット」。
フランス人の愛してやまない小麦と塩と酵母だけで作られたシンプルなバゲットは、焼きたての美味しさは格別です。でもこのパンは1日も経てば「凶器になる」と冗談で言われるほど硬くなってしまいます。
なので食事で食べきれなかったバゲットはキッチンに放置され、次の日にはゴミ箱行き、というのもよくある光景です。パンを捨てるということにわずかな抵抗を感じながらも、食べられないから・・・と申し訳なさそうに捨ててしまう場面は何度となく見かけました。
でもそんな硬いパンも、細かく切ってオイルで炒めれば、サラダにぴったりの香ばしいクルトンに。甘い卵液に浸してフレンチトーストも作れます。もちろん食べきれない分は最初から冷凍庫に取っておくという一手間で、いつでも柔らかいバゲットを楽しめます。
こんなふうに食材を無駄にしないアイデアを提供するサービスもいくつか登場しています。
その一つで2019年に登場した、冷蔵庫の中にある余り食材を選んでレシピを検索する「FRIGO MASIC(フランス語で「冷蔵庫の魔法」)というアプリが人気を集めています。
日本のクックパッドを彷彿とさせますが、こちらは余り食事の使い切りに特化したレシピアプリ。“パン”“ニンジン”“トマト”のように冷蔵庫の余り食材を選ぶとそれを使ったフランス家庭料理のレシピが紹介されます。作りやすいレシピが人気で、フランス語版の他に英語のアプリもあるので、気になる方はぜひお試しください。
FRIGO MAGIC(英語サイト)
https://www.frigomagic.com/en/
フランスではフードロスを出さないよう気をつけながら生活を送ることは、一時期のトレンドを通り越して、暮らしのあり方の一つになっている感すらあります。
食文化に誇りとアイデンティティを抱いているからこそ、食の問題は看過できないという面もあると思います。
日本はというと、日本語には「もったいない」という言葉があるように、元々食べものを捨てることに抵抗のある人は少なくないと感じています。
最近のエネルギーの高騰、食糧の高騰は困った問題ではありますが、この際発想を変えて、「もったいない精神」で、冷蔵庫に眠った食材をご馳走に変える工夫を、楽しんでしまった者勝ちというのはどうでしょうか。美味しく食べて地球も自分も健康になれば、素晴らしいことです。
“アンチ・ガスピ”なクスクス風スープごはん
豆のなかでも「レンズ豆」は使い勝手がよく人気です。
photo by Frédérique Voisin-Demery
今回はあえて買い物を一切しないで我が家の冷蔵庫の余り物で何ができるかを考えてみました。
ちなみに我が家の買い物は大体週1回、料理をした日は買い物の前日で一番食品に乏しい日でした。
冷蔵庫にあったのは大体、こんな感じ。蓮根や大根の切れ端、使いかけのキャベツや茄子などです。
右上の緑色の茎はブロッコリーの芯、中央の根っこはコリアンダー(パクチー)の根です。
どちらも綺麗に皮を剥けば美味しく食べることができます。
コリアンダーの根は茎や葉よりも香りが強いので、少量で風味をつけることができる便利な食材です。
(ブロッコリーの芯の外側は繊維質なので、中の柔らかいところだけを食べましょう。パクチーの根は包丁の背で皮を削るようにすると剥きやすいです。)
我ながらほとんど何もない冷蔵庫ですが、今回はこれに鶏モモ肉だけを加えて、クスクス風のスープがけごはんを作ります。
大根や蓮根も加えるので、味噌を足して少し和風に、ごはんに合うように仕上げます。
もちろん特別な食材は使いません!
クスクス風スープごはん」のレシピ(2〜3人分)
材料
材料(2〜3人分) | 分量 |
---|---|
余り野菜(茄子・ニンジン・玉ねぎ・ブロッコリーの芯・蓮根・大根・じゃがいも・キャベツコリアンダーの根) | 合わせて500g程 |
鶏肉 | 120g |
にんじん(細めのもの) | 1本 |
*ケチャップ | 大さじ3 |
*ニンニク(チューブ) | 小さじ1 |
*赤味噌 | 小さじ2 |
*コリアンダー(粉末) | 小さじ1 |
*クミン(粉末) | 小さじ1 |
*チリペッパー(なければ一味唐辛子) | 小さじ1/2 |
*オリーブオイル | 適量 |
*塩胡椒 | 適量 |
*ごはんを炊いておく | 適量 |
今回の味の決め手は「味噌」。
実はスパイスともオリーブオイルとも相性が良い調味料です。
日本人にはたまらない仕上がりになりますよ!
つくりかた
鍋にオリーブオイルを多め(大さじ2程)をひき、厚めに切った玉ねぎだけを先に炒める。
茄子、ブロッコリーの茎など水分の多い食材を順に加えて表面がしんなりするまで炒め、鶏肉を加えて表面が全体的に白くなるまで軽く炒める。
キャベツ以外の野菜と水(大体700ml)を加え、「*」の印がついた調味料を全て加えて全体をよく混ぜ合わせ、5分ほど弱火で加熱する。5分ほど経って全体的に火が入ったらキャベツも加え、さらに15分〜20分弱火でコトコト煮る(保温調理にすればさらにエコ!)
塩胡椒で味を整えたら出来上がり!
トマトの美味しさが凝縮され、適度な甘みがあるケチャップを使うことで誰でも失敗なく味を決めることができます。
ごはんと一緒に盛り付けて食卓へ。
余りものの野菜とは思えない具沢山のクスクス風スープ。味噌の隠し味でついついスプーンが止まりません。
冷蔵庫もすっきり、家計にもやさしく。小さな工夫で毎日を楽しくエコにしていきましょう