無添加食品プロデューサー「井上嘉文」が提案する【東京にいながら岡山食材】のある暮らし#2

無添加食品プロデューサー「井上嘉文」が提案する【東京にいながら岡山食材】のある暮らし#2

先月にお伝えしたイベント『DISCOVER OKAYAMA IN TOKYO』。
本日は、2夜目のレポート記事。

政府が掲げる『GOTO キャンペーン』において東京が対象にならなかったときに企画したもので、【東京にいながらも岡山の食材をおもいっきり楽しめる】が、コンセプト。

emotional tribeが主宰となり、グルメ愛好家、メディア、卸関係者、流通関係者、シェフ、食品業界関係者などが集まった。

そもそも弊社は、「Emotional Table」という定期的な食イベントを企画している。
その理由は、生産者の販路開拓とブランディングのアプローチとして、「実体験を共有する場の提供」が重要であると考えているからだ。

生産者の食材を実際に料理人が試す環境と機会を提供してあげること。
料理人が最低限のコストで、お客様の反応を直に見て、聴けること。
そして、お客様が食材の新しい発見をして、その商品を欲しくなること。

この3つの同時に叶えられて、全員がwinになれる方法を考えてきた。
広告が一切なく、自然で、エモーショナルなプロセスは何か?
行きついた答えが、シェフを巻き込んだ交流イベントだった。

この日も総勢20名のお客様が集まって大盛況。
GOTOキャンペーンの行先は、岡山県も候補に入れてみてはいかがだろうか。

 

DISCOVER OKAYAMA IN TOKYO@ 桃栗

 

 

会場は、埼玉県・大宮から徒歩3分の懐石料理屋「和食 桃栗」

 

大宮の和食といえば、この江戸料理屋さん。鰻の柳川鍋、伊勢海老、鮑、豊富な魚介が目白押しなコース。田村料理長は料理人としての経験がとにかく豊富で、様々なジャンルに精通している。

 

先付

 

 

牡丹油 トマト 菊花和え
牡丹角煮 猪茶碗蒸し
梨 ピオーネ キクラゲ 白和え
桃生ハム巻き

 

 

この日も、大活躍した有限会社ミナミの猪肉。

肩ロースを焼いて余分な脂を落とし、猪のサクっとした白身を菊とトマト、土佐酢で和えた酢の物が上品なスターターに。トマトも岡山県産である。

牡丹角煮はバラ肉を酒、しょうゆ、砂糖、最後にみりんを入れて、隠し味にカレー粉。猪で出汁を取り、かつお出汁で割る。そして、その出汁を浮かして茶碗蒸しに仕立てた。繊細である。猪は3時間くらい煮込んで程よくトロトロになっていた。

梨、ピオーネ、キクラゲの白和えは、すべて岡山県新見市産。
キクラゲをさっと湯通しをして、果物はあえてゴロっとした食感を残した。胡麻がアクセントの白和えが、果物の甘さを見事に落ち着かせて調和させている。非常に美味しい。

 

向付け お刺身キクラゲ 茹で猪 辛子醤油

 

 

霜を振るくらいサッと湯通ししたキクラゲを刺身風に。
茹で猪は、3日間程、梅エキスに浸けて酵素の力で肉をやわらかくしている。「水分を吸わせることで保水効果も期待できますね」と田村料理長。
身がしまる猪の肉質を利用して、肉を肥大させて、柔らかさを助長。
田村料理長の猪肉を美味しくさせるための探求心、身が引き締まる思いである。これは、脂(白身)がおいしい猪肉の真骨頂な料理であろう。お客様からの反響もすこぶるよかった1品。

 

ロースト猪

 

 

オリジナルの辛子醤油でサッといただく、いわば猪のローストビーフ。
冷凍した猪肉を活用して、2日前に完全解凍。塩をまんべんなく塗り込んで前日に塩を落として、梨のすりおろしに漬け込んだ。
ここでも岡山県産の梨が役立っている。
なるほど、マリアージュとは目の前の料理だけがすべてではない。
仕込みの際にも、田村料理長は食材の融合を模索して具現化してくれたのだ。
生の梨の酵素を利用して肉に旨味を出した。この時に、にんじんやセロリなどの他の野菜も一緒に入れているそうだ。「ご家庭ではにんじんの野菜の皮や、セロリの葉などの野菜で食べないところを利用するだけで十分においしくなりますよ」だそう。目から鱗である。

 

お造り 桃醤油 梨と白身魚の昆布〆  妻一式

 

 

田村料理長チョイスの美味しいお刺身たち。
ここでも岡山の食材が忘れられることなく、醤油はオリジナルの「桃醤油」。
溜まり醤油+薄口しょうゆに乾燥昆布を入れて旨味成分を足し算。
1:2の割合で醤油に対して、桃を擦りおろして汁ごと使った。

 

焼き物 焼き牡丹丸 岡山 ピーマン 茄子

 

 

猪のつくね。ミンチ肉を使って酒、しょうゆを合わせて肉団子をつくる。
パサつきを防ぐために肝となったのが大和芋。
多めにすりながすことで、確かに食感が滑らかになっていた。
「当たり鉢でつくねを普段よりも当たりを強くしました」と田村料理長。
当たり鉢で肉を馴染ませて粘りが出てくる。こちらに山椒、酒、醤油、全卵、パン粉を多めに入れて味を調えた。山椒が大好きなヒトはこのアクセントがたまらない。元々臭みがなくほのかに香るジビエ香に、モンスーンのように山の風味が加わっている。素晴らしい逸品だ。

 

鍋物 牡丹鍋

 

 

秋冬の味覚、牡丹鍋を先取りした気分。猪の王道料理を桃栗スタイルでいただいた。

猪の骨を10時間くらい煮込んで豚骨ならぬ猪骨スープをつくる。
続いて玉ねぎ、長葱、にんじんなどの野菜からも出汁を抽出。
田村料理長は出汁(スープ)づくりが本当に上手であり、食材の「人事」が大変上手である。個々の食材の特徴と強みを生かして、適材適所に組み合わせて、パフォーマンスを最大化させている。さすが、社長。

 

お替り必須の大変滋味深い、ぼたん鍋

 

 

味噌は、八丁味噌、白みそ、赤みそ、田舎味噌のブレンドに胡麻のペーストを加えた。複雑な味わいと奥深さ。八丁味噌は一度、みりんで解してから使用して、最後に醤油で味を整えた味噌ベース。日本人の胃袋を安心させるスープに、猪の温もりを感じる。㈲ミナミの社長は、「猪は命をいただくこと」とよく仰っているが、改めてその命に対峙するきっかけとなるような料理だ。

 

揚げ物 猪ヒレ天麩羅 青唐 胡椒塩

 

 

天婦羅の名所でも修行を積んでいる田村料理長だからこそ、こだわった点は「火入れ」だ。
「衣の揚げ方よりも火の通り加減を一番に気をつけました」と田村料理長。ヒレ肉は最も鮮度を愉しめる肉であるため、低温調理の感覚で、こんがりと色味がついたら気持ち早めに上げて、アルミホイルで余熱で火を通している。だからこそ、ヒレの柔らかさが衰えず、美味しい天婦羅となっていた。

 

食事 焼き牡丹 飯 鍋汁 香の物

 

 

醤油、酒、みりんを1:1:1の割合でベースをつくり、生姜焼きのようなタレをつくる。こちらにも桃と梨をすりこませて天然の甘味を+。
牡丹鍋の汁を出汁でさらに伸ばして、お椀にかけるお茶づけスタイルでいただく〆もの。最後まで猪の、そして岡山食材のオンパレードである。

 

甘味 桃太郎トマト甲州煮 水菓子

 

 

赤い物体は、新見市産の桃太郎トマトを白ワインで煮ている。薄皮を丁寧に剥かれており、舌触りが素敵。
非常に甘く、トマトとは思えない。他の果物と遜色ない糖度バランス。
トマトは、フルーツトマトのように糖度が高いものよりも少し酸味があった方がおいしくできるそうだ。甘味まで泥濘がない。

「和食 桃栗」の田村料理長、素敵な夜をどうも有難うございました!
そして、生産者の皆さん、もっと岡山のおいしい食材を広めていきましょう!

 

★本日のEmotional Table★
『和食 桃栗』
埼玉県さいたま市大宮区宮町1-95
050-3464-9132
https://momokuri.gorp.jp/

文筆家

井上嘉文

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