お料理クラブパルタージュの竹本ともこです。
食卓が楽しくなるフランスの家庭料理を、文化的背景と共にお伝えしています。
秋の季節に、収穫の最盛期を迎えるジャガイモ。フランス語では「ポム・ド・テール(大地のリンゴ)」と呼ばれています。
ジャガイモ種類は豊富で、一般的に見かけることの多い「男爵」「メークイン」だけではなく、栗のような甘さが特徴の「インカのめざめ」「紫色のシャドークイーン」、文字通り赤色が美しい「ノーザンルビー」など様々です。
今では食卓に欠かせないジャガイモですが、本格的にフランス料理として取り入れられたのは、18世紀後半から19世紀初頭頃でした。
今回は、フランス史から読み解くジャガイモの歴史と、ジャガイモを使ったフランスの家庭料理をご紹介します。
目次
フランスの食卓にジャガイモが普及するまでの歴史
エリザベス=ルイーズ・ヴィ ジェ=ルブラン 「à la Rose」マリー・アントワネット 1783
”マリー・アントワネットは、ジャガイモの花飾りを身につけていた”
今でこそ世界中の食卓に欠かせないジャガイモですが、フランス国内で食べ物として取り入れられたのは、18世紀後半から19世紀初頭の頃でした。
それ以前のジャガイモは家畜の餌として使われており、一般的に食卓に並ぶ食材ではありませんでした。
そんなジャガイモをフランスの食卓に取り入れようと努めた人物は、軍人の「パルマンティエ男爵」です。
パルマンティエ男爵は、ドイツでの捕虜生活の中でジャガイモを食べて生き延びた経験から、フランスでも「栄養価の高い食糧」としてジャガイモを食べるようにと呼びかけたのです。
パルマンティエ男爵が行ったジャガイモの宣伝活動により、ルイ16世やマリー・アントワネットなどの著名人もジャガイモを好み、様々な面白いストーリーを残しています。
国を挙げての普及活動のおかげで、フランスにもジャガイモを使った美味しい料理のレシピがたくさん登場したのです。
フランスのママンの味「アシ・パルマンティエ」
ジャガイモを使った代表的なフランス料理は、パルマンティエ男爵の名前が付けられた 「アシ・パルマンティエ」です。
こちらのお料理は、牛肉のひき肉と野菜をジャガイモのピュレで挟み、チーズを乗せて焼いた古典的なフランスの家庭料理です。
言うなれば「フランス版肉じゃが」。
誰もが大好きで、美味しく簡単に作れると、一目置かれるフランスの家庭料理です。
リヨンのジャガイモ料理「グラタン・ドーフィノワ」
フランス第二の都市と呼ばれる「リヨン」のジャガイモ料理は、「グラタン・ドーフィノワ」が有名です。「ドーフィネ」や「ダフィノワ」とも呼ばれています。
名前の「ドーフィノワ」とは、リヨンの北東エリアに位置し、乳製品の生産地として有名な「ドーフィネ地方」から名付けられています。
グラタン・ドーフィノワは、薄切りにしたジャガイモを牛乳やクリーム、ニンニクと一緒に煮込み、最後にオーブンで焼いた料理です。
リヨンのレストランでは、このグラタンがなんと「料理の付け合わせ」として登場します。
リヨン名物のボリュームのあるソーセージに合わせて、こちらのグラタンが登場すると「こんなに食べられない!」と思わずのけ反ってしまうほど。
ニンニクの効いたクリームとジャガイモがお肉料理にはとくに相性抜群で、気がついたらお皿の中が綺麗になっていることが多々あります。
今回は特別に、リヨン在住の奥様から教えてもらった「グラタン・ドーフィノワ」のレシピをご紹介します。
グラタン・ドーフィノワのレシピ
【材料(グラタン皿1枚分)】
材料 | 分量 |
---|---|
ジャガイモ | 4~5個 |
ニンニク | 1片 |
生クリーム | 200ml |
牛乳 | 200ml |
塩 | 適量 |
ナツメグ | 適量 |
黒胡椒 | 適量 |
ジャガイモは、メークインなど煮くずれしにくい品種がおすすめです。
【作り方】
1.ジャガイモの皮をむき、スライサーで薄くスライスする。
※ジャガイモは、水にさらさないことがポイント。
2.大きめの鍋に、生クリーム、牛乳、スライスしたジャガイモ、薄切りのニンニク、塩、ナツメグ、黒胡椒を加え、弱火でコトコト煮る。
※ミルクがホワイトソースのようにモッタリしてくるので、焦げないように気を付ける。固くなりすぎた場合には、牛乳を適量加えて混ぜる。
3.ジャガイモが柔らかくなったら、鍋の中身をグラタン皿に移す。
4.200℃に余熱したオーブンで20分程度焼いて完成。
グラタン・ドーフィノワにはチーズをかけない!?
グラタンと聞くと、贅沢に使われる濃厚なチーズを連想させますよね。
しかし、グラタン・ドーフィノワはグラタン料理の1つですが、チーズを使っていないことにお気づきでしょうか。
フランスでは、グラタン・ドーフィノワには「チーズをかける派」「チーズをかけない派」の2つに分かれることが多いです。
レシピによってはチーズをかけるものも多いのですが(パリの有名シェフのレシピにはチーズがありました)、リヨンで私が見たドーフィノワには、おおむね100%の確率で「チーズをかけない」レシピでした。
食事の付け合わせの料理としては、チーズが使われていない方が良い、という考えもあるのでしょう。同じドーフィノワのレシピでもチーズをかけないドーフィノワが、よりリヨンの家庭料理に近い味をしています。
リヨンで現地の奥様たちと話をした際に「私もドーフィノワを作りますよ。」と言うと、「あなた、チーズは?」とすかさず聞かれたことをよく覚えています。
グラタン・ドーフィノワは、とても簡単なレシピです。人が集まったり、食卓にもう1品加えたい時には、主役のお料理を引き立たせてくれる大活躍の料理になりますよ。ぜひ、お試しくださいね。
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