フランス家庭料理研究家の竹本ともこです。
食卓が楽しくなるフランスの家庭料理を、文化的背景と共にお伝えしています。
毎月開催している「お料理クラブパルタージュ」では、季節に合わせたテーマで食卓を囲み、フランスの家庭料理を楽しんでいます。今月のテーマは「バカンス・キッチン」。
フランスのバカンスでは、どのような料理やワインが愉しまれているのでしょうか。
今回は、前回の記事に引き続き、フランス流の夏の食卓を彩る4つの美味をご紹介します。
目次
海を感じる真夏の定番料理「アクアパッツァ」
上の写真は白身魚の代表格、メバルと鯛を使ったアクアパッツァです。アクアパッツァは白ワインと水で魚介類を煮る地中海料理。白身魚で作られることが多い料理です。
アクアパッツァはイタリア料理ですが、シンプルで美味しく、非常に作りやすい点から、フランス人からも人気のあるレシピです。フランスの家庭では、頻繁にイタリア料理が作られているのです。
トマトやハーブをたくさん入れて、大きな鍋やフライパンで調理をします。メインの食材には魚や貝を使うことが多いです。また、イカやエビを入れても美味しくできますよ。
調理のポイントは、水や白ワインを入れすぎないこと。濃厚な魚のダシをソースのように絡めながら味を整えます。
最後に残ったソースは、パンに浸して食べるのがおすすめです。
100%ベジ!夏野菜のおいしさ弾ける「ラタトゥイユ」
フランス家庭の夏の常備菜といえば「ラタトゥイユ」。
定番料理なのでインターネットにもたくさんのレシピが投稿されていますが、本来のラタトゥイユは「一切お肉が入らない100%ベジ」の料理です。
ナス、ズッキーニ、パプリカ、トマトなどの夏野菜をたっぷりのオリーブオイルでソテーし、たっぷりのハーブでしっかり香り付けしたラタトゥイユは、野菜だけの旨味とは思えないほどの豊かな味わい。
冷蔵庫で冷やしておくと前菜にもなるため、野菜が不足しがちな時にはぜひ作り置きしておきたい料理の1つです。
昔、パリのボンマルシェというデパートに併設されているフードコートで、真夏にラタトィユだけを挟んだサンドイッチが売られているのを見た事がありました。
当時は野菜よりもお肉を食べたい年頃でしたが、クタッと煮込まれたズッキーニがいかにも美味しそうで、(当時はラタトゥイユが野菜料理とも知らず)思わず買って食べて感動した思い出があります。
食卓を囲む夏のパーティーでは、ぜひ薄切りのパンを一緒に添えて召し上がってみてくださいね。
インド洋のスパイス料理!”マサレ”を使った「スパイスチキン」
スパイスチキンは、インド洋の「レユニオン島」で愛されるマサレ(ガラムマサラのようなミックススパイス)を使った料理です。
インド洋のレユニオン島は「フランス海外県」と呼ばれる国土に指定されており、公用語にフランス語が話され、フランス本土の法律が適用されている場所です。
そもそもフランス海外県とは、ヨーロッパに位置するフランス本土から離れた国土を指します。例を挙げると、アメリカとハワイ、イギリスとセントヘレナ島のような本土とは別に管轄している領土が存在するイメージです。
長い歴史の中でフランスの国土は拡大を続けてきました。フランス海外県には、インド洋のレユニオン島の他に、カリブ海のマルティニーク、南米の仏領ギアナなど様々あります。
今まで「フランス海外県」の名前は聞いたことがあっても、馴染みのある方は少ないかもしれません。だからこそご紹介したいのです。
フランス海外県の料理は美味しい!
インド洋のレユニオン島はマサレ、ウコン、クミン、コリアンダーなどのミックススパイスなどが有名です。ミックススパイスなので配合によって風味は様々変化しますが、全体的に辛みを感じるスパイスはとても控えめ。
日本で手に入る市販のカレー粉よりも、ずっと「マイルドな味」です。そのため、鶏肉のような淡白な味のお肉や白身魚にも使いやすく、お料理に取り入れやすいのです。
マサレを市販のカレー粉で代用される際は、辛みの強いカレー粉よりも「辛さ控えめ」がおすすめです。
「辛いものが苦手」と言われるフランス人もこれはお気に入りのようで、フランスではスパイスの専門店に行けば、結構な確率でマサレが置いてあります。
今回は、マサレ、すりおろし玉ねぎ、ヨーグルトでしっかりマリネした鶏肉をソテーで仕上げています。肉汁もしっかり煮詰めてちょっと酸味の効いたソースを添えました。
フランスのバカンスに欠かせない「ロゼ・パンプルムース」
フランスの夏の食卓に欠かせないのが「南仏のロゼワイン」。
南仏のワインは、全体的に飲み口が軽いことから「普段の食事に合わせて楽しむワイン」と言われています。南仏ワインの中でも、夏場はとくにロゼワインが大人気。
冷やしたロゼワインに、グレープフルーツ(フランス語でパンプルムース)の果汁を加えた「ロゼ・パンプルムース」の飲み方がおすすめ。
鮮やかなピンク色が気分を盛り上げ、食卓に華を添えてくれる効果も期待できますよ。
美味しい工夫で優雅なバカンスを愉しみませんか?
暑さに負けそうなこの時期だからこそ、冷たいロゼワインを片手に、気心の知れた人たちと集まり、バカンスを過ごしたいものです。
料理と共にフランスの文化的な背景を知るだけでも、バカンスの食事を一層お楽しみいただけるはずです。
ぜひこの夏はフランス流のバカンスを参考に、フランスの家庭料理で食卓を彩ってみてはいかがでしょうか。
パルタージュとは?現地で学んだ、フランス流の食の愉しみ方
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