7月中旬 に梅雨明けした長野県、8月中旬までの1か月間ほぼ雨の降らない晴天が続いた。(何度か激しいゲリラ豪雨は発生した)
8月中旬から続いた大雨を境に若干気温が下がり、真夏のピークは過ぎたように感じる。
7月までグングン伸びていたブドウ達の生長は徐々に落ち着き、季節は秋へと変わりつつある。
目次
コウモリガの幼虫
ブドウを栽培している者にとっての大敵。
「病気」、「害虫」、「鳥獣」
この「害虫」の中でも特にブドウ樹に大きな被害を与えるのが「コウモリガ」だ。
果樹ではブドウ、リンゴ、ナシ、モモ、クルミ、クリなどほとんどに寄生し、また、ヤナギ、アカシヤ、キリ等の樹木やヨシ、タデ、ヨモギなど茎がしっかりしている多くの草本類にも寄生すると言われている。
【被害と診断】
幼虫が幹や枝の木質部に食入する。通常、虫孔は木質部の中を縦に樹上部に向かっており、虫孔の入り口には木屑や虫糞を糸でつづった蓋をする。この場合、成木ではすぐ実害にならないが、幼木は樹勢衰弱や枯死に至る。幼虫は小さい場合は木質部にすぐ食入できないため、幹や枝を環状にしばらく食害し、それから木質部に食入する。
このため環状被害部で養水分の流通が遮断されるので、そこから先が衰弱したり、一回り食害された場合は枯死する。この場合も環状食害部は木の微片や糞を糸でつづっておおう。木質部の堅いブドウではこの被害が多い。幼虫は老熟すると体長50〜80mm位になり、頭部は大きく、黒褐色、胴部は乳白色~薄い黄褐色、背には多数の黒墨色の斑紋がある。雑食性であるので、雑木林の付近や河川、周辺に雑草が多い園で発生が多い。
なお、ボクトウガ類の寄生被害もこれによく似ているが、この幼虫は淡紅色を呈しているし、虫孔の入り口の蓋がないので区別できる
【発生生態】
果樹など、木本類に寄生した場合は2年に1回発生するが、寄生植物によっては年1回発生となる。成虫は9月中旬から10月にかけて発生する。成虫は日中の間、枝や葉柄に下垂状態で静止しているが、夕暮れになると活発に飛び回る。産卵は飛びながら行い地面に卵をまき散らす。 1回の産卵量は150~300個程度で、総産卵量は2000~3000粒におよぶとされている。この卵は翌春4~5月にふ化する。
(参照:長野県農業関係試験場)
異変が起きる
被害を早期発見し、害虫を駆除できればブドウ樹を枯らさずに済むかもしれないが、発見が遅れると写真のような異変(生育不良)が生じ、このような樹は既に手遅れとも言える程に食害されてしまっている。
被害 その1
被害 その2
被害 その3
対策
幼虫は初め雑草を摂取し成長し、その後、周辺に分散しヨモギ、ギシギシ、イネ科植物、ワラビなどの草本類の茎内に食入する。 6月になると大部分はこれら雑草からでて、近くの木本類に移動して食入し、ここで越冬する。移動距離はそれほど大きくなく、せいぜい10m程度である。翌年さらに成長して7~8月に食害の際、蛹の空殻は被害部から半分ぐらい突出する。
(参照:長野県農業関係試験場)
上記詳細からも分かるように、一番の対策はやはり、若齢幼虫期の生息場所をなくす「圃場内および株元の除草」である。
事実、ブドウ栽培者はコウモリガの被害をなくすために、株元含め圃場の除草はなるべく行っているのだが.. ワイン用ブドウ圃場の植栽本数は数千本を超えるのが当たり前で、その全てを綺麗に除草するには非常に大きな労力が必要となる。
除草剤を使う生産者も多いが、それを使用しないとなると、高級な除草用機械を用いるか、手作業となる。(株元まで刈れる特殊なものは100万円を超える)
(機械での草刈り)
(株元の草刈り対策でシロツメクサをカバークロップとしたが、これではコウモリガ対策にはならない)
昨年も20〜30株ほど被害にあったが、今年も同じくらい食害されてしまった。。
6500本ある中の20〜30本と考えることもできるし、1本1本全てが大事と考えることもできる中で、除草に要する労力や時間を踏まえて対策を考えていく必要がある。
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