こんにちは、栄養士・食育栄養インストラクターの片桐佑香です!
【受け継ぎたいばあちゃんの知恵】は、“食の多様化が進む中でも、10年後も20年後も、ずっと受け継がれて行けば素敵だな”と感じる「ばあちゃんの知恵」が詰まった日本の伝統的な“美味しいもの”を、漬物作り・味噌作りなど、手仕事が大好きな私がご紹介していく企画です。
10月。夜、仕事を終えてお家に帰って来ると、ヒーターを付けようかつけまいか迷ってしまうほど、少し肌寒い季節になりました。ちょっと前まであんなに暑かったのが信じられません。
この季節に採れる美味しいものといえば「りんご」。父方のじいちゃん家の集落は、多くの家庭が農家を営んでいました。じいちゃん家ではりんごは育てていませんでしたが、物々交換でもらったりんごがいつもたっぷりありました。
遊びに行ったある日、ばあちゃんが
「りんごのジャム、一緒に作るかい?覚えて帰って、お家でも作ってごらん。」
そう言って、小学生だった私に、りんごジャムの作り方を教えてくれました。
それが私にとってのジャム作りの最初です。出来立てのジャムをスプーンで味見すると、口いっぱいに広がって、鼻にまで届くりんごのいい香り。甘酸っぱさが癖になって、味見のつもりがもう一口、もう一口とついついスプーンが進んでしまうのです。それからというもの、四季折々の果実でジャムを作るのが、私の趣味の1つとなりました。
今回は、色鮮やかなりんごジャムのレシピと、それを使った思い出のりんごのお菓子をご紹介します。
目次
りんごの栄養と、ジャムに最適な理由
りんごの旬は品種によって様々ですが、10~12月に旬を迎えるものが多いです。りんごには、疲労回復効果のある“リンゴ酸”や、むくみ防止に役立つ“カリウム”、整腸効果のある“ペクチン”が豊富に含まれます。皮にはアンチエイジングに効果的な“ポリフェノール”が豊富に含まれるため、りんごは皮ごと食べるのがおすすめです。
また、“ペクチン”が豊富なことにより、整腸作用以外にもこんな嬉しいポイントもあります。それは、ジャムにした時に失敗が少ないこと。ペクチンは、糖・酸と反応し、ジャムをとろっとさせる効果があります。だから、他のフルーツで作るジャムに比べて「出来上がりがシャバシャバになってしまった」という失敗が起きにくいです。フルーツによってはペクチンが少ないもの(いちごやキウイなど)もあります。その場合はペクチンが多いレモンや、りんごの芯、または市販のペクチンを加えて一緒に煮てとろみを付けます。
“ジャム”は糖分をたっぷり含むため日持ちし、フルーツの美味しさを長い期間楽しむ方法の一つ。旧石器時代から受け継がれてきた生活の“知恵”です。
茜色のりんごジャムのレシピ
「りんごをたくさんもらったから!」と言って、父がたくさん送ってくれたりんごを使ってジャムを作りました。ふじ、シナノゴールド、紅玉・・・。いろいろ入っていましたが、中でも酸味がはっきりとしていて、お菓子作りに使っても負けない味の、“紅玉”を使用しました。
「茜色のりんごジャム」の材料(作りやすい分量)
材料 | 分量 |
---|---|
りんご | 700g(中くらいのもの3つ) |
上白糖 | 400g |
レモン果汁 | 大さじ1 |
「茜色のりんごジャム」の作り方
1.りんごは皮をむき、8等分に切って芯を除き、3mm幅に切る。皮は捨てずに取っておく。保存用のビンは煮沸消毒した後、乾かしておく。
2.鍋に切ったりんごと皮を入れ、上白糖を入れて全体に行き渡るように軽く混ぜ、3~4時間おいておく。
3.2を中火にかけて混ぜる。沸騰したら火を弱め、アクが出れば取り除く。ふつふつと沸騰し続ける火加減で、20分程煮る。
4.とろみが付いて来たらレモン汁を加えて混ぜ、更に5分煮て、りんごの皮を取り除く。熱いうちに保存用のビンに詰め、フタをして冷ます。(冷蔵庫で約2週間の日持ち)
※長期保存させたい方はこちらも行って下さいね!!
5.4のビン詰めの際、ジャムを9割くらいの高さまで入れ、軽めにフタをする。鍋に布巾を敷いてビンを乗せ、ビンの肩の高さまでお湯を入れて20分茹でる。ゴム手袋などをして火傷に気を付けながらビンを引き上げ、一瞬フタを緩め(空気が逃げるので、シュ!っという音が聞こえることがある)、すぐにしっかりとフタを閉める。)
※5.を行うと、ビンの中から空気が追い出されるため、菌が増殖するのを防ぐことが出来ます。保存状態にもよりますが未開封・冷暗所保管で半年以上日持ちします。
りんごの皮を一緒に煮ることで、アントシアニンという赤い色素が溶け出ます。そして最後にレモン果汁を入れることで色止めの役割を果たしてくれて、キレイな茜色のジャムが出来上がります。まるで秋の夕暮れのよう。りんごの種類や皮の色によって仕上がりの色にかなり違いが出ますが、深い色に仕上げたい場合はやはり紅玉がおすすめ。
色は派手ですが、味は昔ながら。りんご・しっかりとした甘さのある上白糖・レモン果汁といったシンプルな材料で仕上げているためです。シャキっとしたりんごの食感も少し残り、酸味も程よいので、ヨーグルトにとても合います。他にも食パン、紅茶・・・。ぜひいろいろなものに使ってみて下さい。
思い出のアップルパイ
余った“餃子の皮”で作るアップルパイ。私は小学生になるまで、これがスタンダードなアップルパイだと信じ込んでいました。餃子の皮で作るアップルパイを他で見たことがないので、料理上手なばあちゃんのアイデア料理だと思います。とてもお手軽に作れて、余り物で出来る節約料理なのに、大人になった今でも忘れられない味です。
今回は、先ほど紹介した“茜色のりんごジャム”を使って作ります。
「思い出のアップルパイ」の材料(4人分)
材料 | 分量 |
---|---|
餃子の皮 | 12枚 |
りんごジャム | 適量 |
シナモンパウダー | 適量 |
油 | 適量 |
「思い出のアップルパイ」の作り方
1.餃子の皮にりんごジャム(10gくらい)を乗せ、お好みの量のシナモンパウダーをかける。端に指で水を塗って半分に折り、しっかりと口を閉じる。フォークの背を押し付ける様にして、跡を付ける
2.170度の油で1を揚げる。こんがりと色が付いたら、キッチンペーパーを敷いた皿に引き上げ、油を切る。器に盛り付けて、アツアツのうちに食べる。
「夕ご飯に餃子を作ったけれど、皮だけ余ってしまった。」ってこと、たまにありますよね。そんな時、ぜひこのレシピを試してみて下さい。市販のお好みのジャムで作るのも楽しそう。素朴だけど意外と美味しくて、お茶の時間にぴったりだと思います。ぜひアツアツ・サックサクなうちにどうぞ!
りんごを半分に切った時、蜜がたくさん入っていると、とてもハッピーな気分になります。食べてみると、甘くて歯ごたえもシャッキシャキ。今年も秋が来たなぁと実感します。秋を過ぎると蜜はりんごに吸収されてしまうので、楽しめるのは今だけ。
今が旬のりんごを使って、手づくりのジャムを作ってみませんか?簡単なので、親子や家族で一緒に作ってみるのも楽しいと思います。手作りしたジャムがトーストと共に朝食に登場する度に、大切な人と一緒に作った楽しい記憶が思い出されるでしょう。