みなさまこんにちは。
お米には「お父さん」と「お母さん」がいます。
通常、わたしたちが食べているお米は、同じ品種のお父さん(おしべ)とお母さん(めしべ)から生まれたお米です。
しかし、天候や日本人の嗜好の変化など、必要な品種は日々変わってゆきます。
様々な事情から、適切な「お父さん」と「お母さん」をめぐり合わせる・・・
そんな婚活が日本のあちこちで行われているのです。
平成というひとつの時代が終わり、新たな時代、令和へと移り変わりました。
今まで「昭和ネタ」として扱われてきた心温まる懐古的事柄が刷新されて「平成ネタ」となり、もう「昭和ネタ」は封印されるのでしょうか・・・
鼻の頭を赤くし、ネクタイを頭に巻き、日本酒で酔っぱらった昭和のお父さんは、紐でくくったお寿司の折り詰め以外に何をお土産に持ち帰ったらよいのでしょうか・・・
一斤1000円もする専門店の食パン?
そもそも、酔っぱらうほど日本酒を飲まないって??
ここでも米消費の減少の問題が浮き彫りになります。
しかし、お米も新たな時代に突入しています。
いわずと知れた日本を代表するお米、「コシヒカリ」の血を受け継ぐ「あきたこまち」や「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」といった「コシヒカリ・第2世代」の登場から30年以上の月日がたち、時代は孫・曾孫の「第3世代」「第4世代」へと移り変わるのでございます。
今回ご紹介するのは、そんな新しい時代の象徴ともいえる「新之助」。
お母さんは「新潟75号」。お父さんは「北陸190号」。
新潟県農業総合研究所で開発され、2016年に発売となりました。
お米では珍しい、大々的なプロモーションで、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
日経トレンディ主催の『米のヒット甲子園2018』で大賞米を受賞もしました。
ブランド展開も、今までのお米とは違い、赤と白のスタイリッシュなパッケージデザイン、水引をイメージしたというロゴデザインに始まり、ブランドのグッズやコラボレーション商品も多数あるようです。
大人たちの期待が伺えますね。
そんな「新之助」ですが、お母さんとお父さんの名前は聞いたことがございません。
私たちが一般的にお米の「名前」と言っているものの多くは、農林水産省に登録している「品種名」となります。
「新之助」のお母さん、お父さんにつけられている「新潟75号」、「北陸190号」という番号は「地方番号(旧系統名)」などと言われる識別番号になります。
ちなみに「新之助」にも「新潟103号」という番号がつけられているのです。
なんだか格好いいです。
「新之助」の開発は2008年に始まりました。
「日本を代表する米どころ、新潟県で新たなお米を考える必要なんてあるの?」
とお思いの方も多いことでしょう。
新潟のお米・日本のお米といったら「コシヒカリ」。新潟で作られるお米の約70%が「コシヒカリ」だそうです。
そのため、収穫時期が重なったり、病気や天候などの悪条件を同じように受ける恐れがあります。
2018年に放映されたドラマ『下町ロケット ヤタガラス』でも、ちょうど収穫時期に台風で大打撃を受ける米農家の様子が描かれていました。
その分散のため、早く穫れる<早生>の「こしいぶき」が2000年に開発されました。
続いて今度は、温暖化の進行もふまえ、遅く穫れる<晩生>の開発にかかり、「新之助」が誕生したということなのです。
ちなみに、新潟のイメージが強い「コシヒカリ」ですが、福井県農業試験場で誕生しています。
『スタイリッシュな現代的日本男児』をイメージして命名したという「新之助」という名前。
私には平成生まれの子たちが声マネする、ゲジゲジまゆげの幼稚園児がまず思い浮かびます。
『現代的日本男児』に偽りはございません。
こうしている今でも、日本の未来のために日本のどこかでお米の婚活が行われているのでございます。