紅ズワイガニ海老美さんを接待したい店ー『うぶか』/腰果P

紅ズワイガニ海老美さんを接待したい店ー『うぶか』/腰果P

「もしもし。紅ズワイガニ海老美でございます」

「なんちゅー名前や、海産物が2つも入っとる…」

これは、お笑い芸人の「千鳥」の定番の漫才ネタ。
嵐のコンサートのチケットを取ろうとすると、この紅ズワイガニ海老美が見当違いのチケットを取るというネタ。最後の最後までアドリブ満載で、笑いを誘ってくる。
この紅ズワイガニ海老美さんへのノブさんの上記のツッコミを聞くたびに、私はこう思う。

 

「うぶかのコースには、ありえるのよぉ」と。

 

コースの中に、紅ズワイガニを始めとした蟹も、海老も2つどころか余裕で入ってくる。
だって、甲殻類専門の懐石料理屋なのだから。蟹と海老がコース料理の90%を占める。
それなのに、この価格…。予約が、道理で取れないわけである。

都内で大好きな懐石料理屋の1つである「うぶか」には、私には特別な想いが芽生えている。
2020年の1月、年始めの仕事は、この「うぶか」の加藤店主とのコラボレーションだった。

如月 お品書きともに、料理をご紹介したい。

 

椀物 栗蟹真蒸 柚子 菜花

 

 

 

向付 車海老 鰆

 

カシューP:さて、本領発揮と来た。このあたりから、お酒は2種類目に、同席者と色んなsakeを頼んで、マリアージュの勉強を。

 

 

 

一品 毛蟹 湯葉 金柑 山菜

 

カシューP:金柑を蟹と合わせるって思いつかないよ…。山菜も最高に合うし、毎度毎度、センスに脱帽する。

 

 

 

毎月、料理に合わせてスペシャリストが日本酒を選ぶ

 

カシューP:献立をつくった後に、日本酒のエキスパートと呼べる酒屋さんが、この料理に合う全国の酒蔵のお酒を「うぶか」の加藤店主に紹介をしているそうだ。私たちよりも経験、知識がある専門家による料理とのマリアージュが、毎月実現されているのは、ありがたいことだろう。だからか、同じsakeをこの店で飲んだことがほとんどない。

 

 

 

蒸物 いばら蟹 聖護院大根 河豚白子

 

カシューP:これ、最強です。カブも柔らかく、優しい。橋を入れると綻ぶカブ。
加藤店主の優しさが滲み出ているように優しい和出汁に、そっと蟹と白子も溶けだしていく。

 

 

 

★本日のスペシャリテ 松葉ガニの刺身 

 

カシューP:この蟹は、私たちのテーブル4名分に用意されたもの。もう、出された酢味噌すらいらない。濃厚で、口の中でとろける蟹の甘さは、秀逸無二。実は、私も懇意にしているマルヤ水産株式会社(兵庫県香住町)の松葉ガニを、刺身で提供していただいた。

実は、この夜は少し特別だった。2020年1月8日に「Emotional Table」というemotional tribe代表の井上嘉文 氏がマルヤ水産株式会社の依頼で、開催したイベントに、昼の部と夜の部を間違えてしまって惜しくも参加できなかった1名のお客様がいた。

その人も最後にハッピーエンドになるためには、どうすればいいか?
そこで、加藤店主と企画した食事会だった。私は、特別にその夜に参加することができた。この日のために、特別にこの松葉ガニを冷凍して、キープしていただいた。アレンジを本当に有難うございました。

 

 

 

強肴 桃蟹 唐墨

 

 

 

揚物 車海老味噌フライ 実山椒のタルタル

 

カシューP:写真泣かせの、このジャンボサイズ!「海老フライ」という陳腐な言葉では、怒られる。
そのくらい立派で豪勢な海老が揚がる。中には、ジュワっと味噌が詰まる。
これがたまらない。猫舌だろうと、火傷も後悔しないなだろう、「喉から手が出る」の言葉に相応しい料理である。

まだかまだかと右手の箸が行儀悪く音を鳴らし、フライングする。「熱っ」と思いながら、これぞ至福。
この料理を前に、人は間違いなくMになる。

 

 

 

飯物 松葉蟹 蓮根

 

カシューP:ご飯は、赤出汁 葱 豆腐 油揚げ 山椒 若芽と一緒にいただく。香物 大根 白菜も添えて、すべて自家製だから、安心である。美味しすぎて、何度もお替りはOKだけど、23:00手前だったので、おむすびにしてもらった。お土産にすると、翌日の朝食で余韻に浸れるのでオススメである。さて、このあとに、デザートとして「水物 葛餅 旬の柑橘」が出たが、撮影を失念。

 

 

 

「料理は人柄が反映される」を実体験させてくれる、加藤店主!

 

カシューP:1品、1品の説明を有難うございました!

 

 

 

編集後記

 

2014年、ストレスでボロボロになった私は外資系証券会社を退職し、ハローワークであるおじさんに話かけた。そのおじさんは、壁の求人票を真剣に見つめていた。
僕は、おじさんから発していた魅力に吸い寄せられたのだろうか。
もしくは、「求職中」の仲間が欲しかったのだろうか。同期は優秀な人ばかりなので、こんなに早く「無職」に転職をした人はいなかったから。
孤独は、時に行動力へモチベートするらしい。

そのおじさんは、某有名チケット企業に勤めていて、病気が原因で退職をしたらしい。当時、44歳くらいだった。
立ち話が盛り上がって、僕は全く知らないおじさんとその夜に食事をすることになった。
そして、話の流れでその人のコーチングをすることになった。同じ無職なのに…私のコーチングのスキルがその人には刺さったらしい。勉強や資格は、いつ役に立つか分からないものだ。

でも、お互いに雇用保険を受けている立場である。アルバイトは禁止だし、お金を頂くのは悪いと思った。
だから、「その日の飲食代」をコーチングのセッション代にすることになった。
どうやら、その人も美味しい食事とお酒が大好きなようだった。

 

 

最初は、蒲田で有名な羽田付き餃子を3店、ハシゴした。次は、麻辣香鍋という、汁なし火鍋のような店で会食。恵比寿の『emuN』(現在は、代々木上原に移転)というフレンチにも一緒に行った。そのおじさんは高級フレンチに短パンを履いてきて、ラフな格好すぎてホールスタッフに怒られていたのが懐かしい。そして、一緒に行った店のひとつが、この『うぶか』だった。

 

 

私は『うぶか』の加藤店主と、ほんの少しだけ帰り際に会話をして、名刺をいただいた。
本当に最初から最後まで料理が美味しくて、今でもあの時のメニューを反復できるほど、脳みそに刻まれている。心の底から感動して、僕は加藤店主の名刺をずっと、「飲食店専用」の名刺ファイルに入れていた。“いつか自分の財布で来たい店”と、大切に保管をしていた。

そして2019年、「うぶか」の加藤店主と仕事でご一緒できる機会に恵まれた。当時、ニートだった僕は、蟹にまつわる仕事をしているなんて夢にも思わなかっただろう。何より嬉しかったことは、加藤店主が5年前の私を覚えて下さっていたことだ。初来店のあの時から、一度も訪れていないから忘れていて当然なのに…。目頭が熱くなった。

 

何度も再訪したくなる甲殻類専門店「うぶか」は、私にとって特別な店だ。
美味しい蟹と海老、お酒、そして加藤店主の人柄に癒される。
東京で甲殻類×懐石と言われたら、もう、この店しか浮かばない。

ご馳走様でした。

シナリオライター/コピーライター
腰果P(カシューP)

※取材依頼・問い合わせは、GOO GOO FOOまでお問い合わせください※料理(客単価)10,000円以上~の飲食店のみ取材を引受けさせていただいております。

 

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