「情報の受け手に『リテラシーを身につけよう』、平たくいえば『賢くなれ』と働きかけることには、限界がある」
このemotional なフレーズは、大宮駅徒歩2分の懐石料理「和食 桃栗」にて、生産者×料理人×美食家を繋ぐフードイベント【Emotional Table】を振り返らせる。
2020年2月27日、イベント自粛のアナウンスの翌日、主催者としてコロナ対策へのアナウンスとして、参加者の条件・対策を一斉に配信した上で、当イベントは開催した。
今回の主役は、大宮の高島屋の地下1階に、長崎県商工会連合会が運営するアンテナショップ「埼玉ながさき屋 直営店」。埼玉ながさき屋は、4月から対馬の鮮魚を詰めた「鮮魚BOX」の販売を飲食店や小売業者向けに開始する。
“海なし県”の埼玉県が、料理界でも評価が高い対馬産(長崎県)の美味しい魚を流通するお披露目として、emotional tribeもイベントを通じて応援することになった。
目次
~対馬の魚、下から見るか 横から見るか~
図鑑などを見る機会が少ない現代の子どもたち。中には、スーパーで馴染みのある“ロインされた切り身”が海を泳いでいると認識している子もいると聞いたことがある。
動画視聴の日常化で、その食育はクリアされてきただろうけど、食育とは、本来は大人のためにあるものだと考えている。
大人が食と真剣に対峙していれば、家庭の中で子は自然と食育されるからだ。
私も対馬の魚を、多角的に見て、嗅いで、味わって、人と美味しさを共感する。
そんな五感をフル活用する機会にしたいと願い、このイベント名とした。
写真は、田村料理長(社長)。料理説明が、1品づつ丁寧に来場者の耳に届く。
先付 鰆けんちん 胡麻豆腐旬彩載せ 栄螺磯煮
対馬のこの時期は、栄螺がとれる。この栄螺の突き出しが対馬を感じて、非常に美味しい。他は、対馬でなくて、料理長のスペシャリテ。ごま豆腐など、懐石料理らしさ、丁寧な仕込みが絶妙。
お椀 鯵 自然薯 つみれ汁 白髪ねぎ 五島うどん 絞り生姜 口 木の芽
「フレンチやイタリアンだと、料理のおいしさは、最初のスープで決まる」というのが、私のロジック。
和食の場合「先付」と「お椀」が大切である。もう、最初の一口でこの先の料理への安堵と絶大な信頼がある。
このつみれは、対馬から空輸した鯵をつみれにしている。爽やかで、アクセントとなる生姜と、五島うどんを添えて下さった。
お造り:本日 対馬からの魚 クエ 鰤 真鯛 あおり鳥賊
代名詞のお造り。長崎県・対馬から空輸される最高級の魚貝類が届くサービス「鮮魚ボックス」により、その日に揚がった魚を空輸して、翌日に届くシステムである。
この日のお造りはすべてが、対馬から届いたものだ。
実は、私は前の週に岡山県のフレンチで低温調理の魚を食べて、ウイルス性胃腸炎になってしまった。
そのため1週間は生魚を控える必要があり、料理長にすべてのお造りを炙っていただいた。きめ細かい配慮も嬉しい。感謝である。
さて、“タイ”と名前の一部につけられた魚は、約300種あると言われているが、本物の鯛は、10種類しかない。
なかでも真鯛は、姿・色・味の3拍子そろった「海魚の王」として珍重されている。鮮やかな外側のオレンジのような赤色は、常食としている小エビの殻に含まれている色素によるもの。
赤色は魔よけになり、めでたい色であるため、祝い事の魚になった。悪魔のウイルスであるコロナウイルスも撃退するに相応しい魚だ。
イサキ焼目付 他 妻 一式
これがメイン料理ではなく、あくまで前半のお造りの一部。埼玉ながさき屋さまと、現地の仕入れ担当者の方の最大限のご厚意で、実現した献立である。
この日のコース価格は、6820円(税込)と破格!
皆さん、今すぐ、クエを含めた8種類の魚種が入るような懐石コースを検索してみよう。この価格で、このような魚種ラインナップが食べれるのはEmotional Tableの一夜だけである。
焼き物:ヒオウギ貝味噌素焼
甘鯛風干し焼鰹 胡桃 天豆密煮 はじかみ
ヒオウギ貝には熱が加わり、とろけるような濃厚な味噌と溶け合う。1つの料理の中で阿吽の呼吸が、役割を超えて自然と溶け合う。
ヒオウギ貝と味噌、料理界の翼君と岬君のような黄金ペアが織り出す空間に酔いしれた一皿。
甘鯛も、言うことなし。さっきから、素材の旨味が本当によく出ている。田村料理長は、塩分の配分も申し分なし。もう一皿食べたくなる、絶妙な自然の味わいが素敵だ。
蒸し物 クエ ちり蒸し ポン酢 赤おろし 芽ねぎ
揚げ物 原木椎茸 海老真丈揚げ 五島の塩 すだち
これは、悶絶。乾燥した原木椎茸をここまで美味しく仕上げるとは、完全に脱帽です。
食事 のどぐろ 土鍋ごはん 三つ葉 赤だし 香の物
これが、↑の動画でも話している、ノドグロを7本使った土鍋ごはん。なんとまぁ贅沢な…。
これだけで、懐石料理屋行ったら8000円くらいはするでしょう。
イベントが盛況で、当初の予定より大幅に過ぎて22:30になってしまったので、私はおむすびにしてもらいました。
初めての「ノドグロおむすび」。昨晩の余韻が残って、素敵な朝食を迎えることができました。
田村料理長、感謝します!!
編集後記
本日紹介した本の言葉は、東京工業大学リベラルアーツ政府研究教育院/環境・社会理工学院准教授の西田亮介氏の文中の主張。
確かに、「賢くなれ」という言葉だけでは、メディアの影響力に勝つことができなそうだ。
今回の世界中のティッシュやトイレットペーパー欠品騒動は、1973年(昭和48年)12月豊川信用金庫事件を真っ先に思い出した。
私はこの時代に生まれていないけど、あるテレビ番組で見て、衝撃的だった。
これは、女子高生3人の雑談がきっかけで、「豊川信用金庫が倒産する」という噂(デマ)が流れたことから短期間に約20億円もの預貯金が引き出された事件だ。
人は、デマによりパニックを起こすことは社会学から見ても実証済みである。
手に入らないものは、手に入らない。騒いだところで結果は同じである。
ならば、「ティッシュペーパーの旅」に託けて、外に出てみてはどうだろうか。
ティッシュペーパーを探す大義名分があれば、少しは精神的に楽になるだろう。
和食 桃栗では、今月いっぱいは、「クエのちり蒸し」が通常メニューでも食べることができる。
大宮に来て高島屋の「埼玉さがさき屋」でお土産を買って、『和食 桃栗』で日本酒とクエを愉しんでみてはどうだろう?
メディアや噂バナシというあらゆる情報の喧騒から離れて、美味しい食事は平穏な心をきっと取り戻すことだろう。
ちなみに大好評につき、2020年4月29日、Emotional Tableをまた桃栗で開催が決定!岡山県新見市のバックアップで、『Emotional Table~桜と牡丹~』を開催いたします。
大変、お得なコース設計にしているので、是非、足を運んでみてください。
皆さまも、素直な好きを大切に。
井上嘉文
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