【あなたと17の約束】う米めん

【あなたと17の約束】う米めん

大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手の勢いが止まらない。
2013年、彼が日本ハムに入団をした後、目標シートを綴ったときのエピソード。
「メジャーに行く」「160㎏を投げる」と書いた。

ここまでは、野球の目標。

もう1つ、彼は目標シートに「論語と算盤を読む」と書いたそうだ。


学問の師である渋沢栄一が講演などの際、口述した内容をまとめた代表作「論語と算盤」は、“経済界の聖書”的な存在である。1961年に初版が出版された。

2つの元号を跨いで、令和になった今も尚、彼の道義に則った経営哲学を「社是」と位置付ける企業も多いほど、愛読者が存在する。

 

第一次世界大戦の好景気の中。
銀行が企業に闇雲な融資を行った結果、その後のバブルが弾けて、不況に見舞われる光景を目の当たりにしたのも渋沢栄一だった。
だからこそ、経済倫理を啓蒙する重要性を実感して、言葉に重みが出る。

道徳を説く“論語”と、商売の儲けを連想させる“算盤”。
この相矛盾した相反するかのような2つの論理。

 

“異質な2つを両立させて、新しい価値を生む”という、道徳経済合一説は渋沢栄一の教えである。“二刀流”の大谷翔平選手は、入団時に掲げた全ての目標を、まさしく有限実行したことになる。

 

最近、私にも新たな出逢いがあった。医療機器・電子機器部品の製造を営む会社が、農業分野に挑戦するというパワフルな経営者だ。
まさしく、“二刀流”である。

 

小麦や食品添加物を一切使わないグルテンフリーの米粉麺を6次産業化で製品化するという。グルテンフリーの専門家としては、協力せずにはいられなかった。東京にお越しになる際、面談すると意気投合し、現地へ取材と向かった。

福島県や子どもたちへの、愛と優しさ。
そして、歴史ある既存事業に邁進している女性社員の雇用を守ること。

両手にしっかり大志を抱き、二刀流をやってのける女性専務が天栄村にいらっしゃる。

 

あなたと17の約束。

本日は、アルファ電子株式会社さまのグルテンフリー麺「う米めん」。

 

 

天栄村に本社を置く、アルファ電子株式会社

 

 

アルファ電子はもともと、ものづくりの会社として1969年に設立した。長年、医療機器や電子機器の受託製造を行い、52周年。

天栄村は、赤ねぎ、天栄ヤーコン、ブランド無農薬米など、農産物も豊かな土地。お米は特に有名で、食味分析鑑定コンクールの国際大会で10年連続で金賞をとっている。風が気持ちいい。

 

 

「ファ●コン」マニアには、たまらない?

 

 

このチップ、「RFモジュレーター」と言うらしい。
日本の文化をつくったゲーム機の中に埋め込みされている。
このような電子機器の製造市況は、近年IOT化が急速に進んで激変した。製品寿命が短くなり、製造するプロダクトも変わっていく。そのため、会社には迷いが生まれたそうだ。

「果たして、このままでよいのだろうか?」

 

 

グルテンフリー食品の開発に踏み込んだワケ

 

 

経営陣を筆頭に模索する日々が続いた。そんな矢先の2011年、東日本大震災が起きた。

 

樽川 千香子専務(写真)は、生後3か月のご子女と一緒に、身寄りのない新潟県へ避難。そのときに出会った佐渡の会社がつくる米粉の製品と出会った。

 

おいしい、ワクワクさせる新潟の米粉商品の数々を賞味して、光芒一閃、脳裏に一筋の仮説が過った。

 

「景気に左右されづらい製品(商品)づくり」
「福島県への地域貢献ができる製品(商品)づくり」

の2つをテーマとしていた樽川専務。

 

もともと、専務のご子女は乳幼児アレルギーを発症していた。
小麦、大豆、乳製品が食べられない。今では、アレルギー耐性ができて安堵を覚えたものの、“母親”ならではの悩みが共感できると思った。

 

「挑戦に踏み切るとき、そのビジネスは、何も電子部品でなくてもよい」新しい事業は、食品、すなわち6次産業化に決めた。

 

会社に入社して6年目の樽川専務は、本業の電子機器部品の仕事も担当して、新規事業へ足を踏む入れることになった。

 

 

インキュベーションオフィスも借りて本格的に

 

 

日本人の主食である、お米を使って製造する米粉麺”う米めん”の開発。「米粉製品の開発は、まったく未経験。」と語る、樽川専務。

 

それもそのはず。家電組み立て、蓄電池、レントゲン操作ボード・・・。
今までの経験とは、全く違う分野である。

 

ただ、新たな市場に期待を寄せて、新しい角度から挑戦していこうと、社内の酒井さんと2名体制で、商品開発が始まった。新しい付加価値の創造として、郡山にもオフィスを新たに借りて、試行錯誤を繰り返した。

 

辛いときがあった。投げ出したくなるときもあった。しかし、震災の影響を受けながら再び立ち上がり、農産物を作っている農家さん・地域の子どもたちのために、真剣に稲作りに向き合っている米農家などの“熱い”想いを持っている人たちに喚起されて、また腕をまくった。

 

 

“美味しい”を科学する

 

 

美味しさの秘密には、東京都内の大学にある研究室との共同研究で、「麺のコシ」を探る苦労があった。
グルテンフリーの麺は、「ピーク粘度」が大切である。

硬化していく硬度のスピードが配分や米の品種によって異なるからだ。

コシノカオリ、雪国、コシヒカリ、天のつぶ…。
あらゆる福島県のお米を、うどんに試してみたそうだ。

 

 

グルテンフリー麺の課題は「食感」と「コシ」

 

 

パスタのようなアルデンテは生めんでは難しく、時間が立てば茹でた鍋でドロドロと溶けてしまう。

増粘剤を入れれば麺は簡単に作れるが、“無添加”にこだわった。
そのため、馬鈴薯でんぷんの配合も調整して、添加物フリーで麺をこしらえた。

 

また、麺の細さも追求した。


「稲庭うどん」は3mm形状であるが、最も堅い。
つまり、3mmには理由があって、稲庭うどんをあれ以上太くすると顎を痛めるほど、噛めないうどんになるそうだ。

 

その絶妙なコシとバランス感こそ、「う米めん」の強みである。

写真は、後述する自社で栽培の木耳(きくらげ)を使ったレシピ。木耳、茄子、オクラを味噌とカレーパウダー、クミンシード、ガラムマサラで炒めて、卵で綴じる。

 

 

自社栽培の木耳(きくらげ)、“姫クラゲちゃん”

 

 

木耳って、実は最高のスーパーフードであるのに・・・(笑)

色が、地味だからか、爆発的にヒットしない食品である。ただ、たぶん、知っている人は常用しているダイエットフードでもあることは、間違いない。

 

 

茹でた状態で比較すると、木耳の食物繊維量は、ゴボウの約3倍。
特に不溶性の食物繊維が多い食品だ。

1日に食べる食物繊維の目標量は、男性20g以上、女性18g以上(2015年/18~69歳における日本人の食事摂取基準)なので、手軽に補給できそうだ。

鉄分は、レバー約1/5個分に、カルシウムは牛乳約3/10杯分に相当する。
やるねぇ、木耳。

 

 

水清ければ、月宿る

 

 

毎日、成長する生き物が木耳だ。定期的に水やりをしている現場も拝見した。
脇役の木耳に、木漏れ日が刺していて、ドラマチックだった。

地味だけど、大切な仕事。それが農業である。

いくら小売店が「顔が見える生産者」をPRしても、最終ユーザーには届きづらいく、印象に残りづらい仕事が、農業という営み。水が澄んでいれば、月がきれいに映るように、心に汚れがなければ、神仏の恵みがあるというたとえがある。

 

こうして、愚直に木耳と対峙した結果、驚くほど大きく、弾力があり、料理に万能でおいしい木耳を栽培することができていた。

 

「継続し続ける」という、目立ちづらい一種の才能のような食品が、木耳だ。

乾さん、木耳をたくさん、いつも有難うございます!

 

 

「無添加が好き」な人にはたまらない要素

 

 

話を戻して、「う米めん」。

白米麺は、福島県須賀川産の「天のつぶ」を使用し、3mm角のうどん風に仕上げ、玄米麺は、福島県只見産の「コシヒカリ」を使用し、香ばしい香りがただよう7mm平麺のパスタ風に仕上げている。

原材料が、驚くほどポジティブである。
私が国内のグルテンフリー製品の中でも最も推薦したい品だ。

『う米めん白米麺』原材料:米粉(国産)、でん粉(国産)

『う米めん玄米麺』原材料:米粉(国産)、玄米粉(国産)、でん粉(国産)

★食品添加物が一切入らないこと 
★茹で時間が短く、ちゃんとコシがあること

この2つが「う米めん」の最大の嬉しいトコ。

 

 

郡山の飲食店でも愛されている「う米めん」

 

 

 

こちらは、「季節野菜のサラダうどん」夏にはピッタリの一皿。

冷やし中華が食べられない私たち、グルテンフリーランスにとってみれば、大変ありがたい麺である。

『う米めん玄米麺』の玄米麺は、お鍋の季節の最後の〆として最高で、せいろでも美味い。

 

飲食店だけではなく、下記のような福島県内で取り扱い中。

 

■現在の販売先
・道の駅 季の里天栄/道の駅 羽鳥湖高原 (天栄村)
・はたけんぼ(須賀川市)、磐梯熱海観光物産館(郡山市)
・自然食品とみや(郡山市)、コラッセふくしま(福島市)etc.
※ネットでも販売中

 

 

女性スタッフへ。背中で見せる経営。

 

 

アルファ電子株式会社では、約150名の社員が働く中で、女性スタッフも非常に多い。
そんな樽川専務の支持は厚く、女性が働きやすい環境を整備することも使命だと感じている。

 

「地元の福島県への想いを強める大きなきっかけは東日本大震災直後の2年半の避難生活だった。地元である福島県の食べ物は、大丈夫なのかと心配したこともありました。」と語る、樽川専務。


でも、福島の空気や風景の中で育ってきた環境が好きだった。

「娘と、福島で暮らしていきたい」という想いを商品に馳せる。

 

「日本の、ものづくりが変化していくなかで、変化を恐れずに柔軟に対応出来るものづくり力を高めていかなければいけないと感じています。日本人にお米をもっと色んなカタチで食べて欲しい。その一心で、2年間の研究開発によって、日本人の好む食感・美味しさを追求しました。美味しく、安全な商品を多くの人に食べてもらうために、今後も商品を作っていきたいと考えています。そして、食卓に変わらない美味しさを届けたいと思っています。」

と、樽川専務から笑顔がこぼれた。

 

販売者:アルファ電子株式会社
福島県岩瀬郡天栄村大字飯豊字向原60-2
電話 0120-400-106
HP https://umaimen.net/

 

 

編集後記

 

 

「論語」と「算盤」の両方を合わせることで、社会経済が持続可能になると、渋沢栄一は説いた。SDGsの理念をこの時代から提唱していた。そんな「論語と算盤」は、私の指南書でもある。

 

もともと渋沢栄一は、幕臣として仕えた徳川慶喜のことは生涯にわたり敬愛して、業績を顕彰する自伝の編さんに携わった。渋沢栄一が、実は大切にしたことは、「人と人とのネットワーク」だった。

 

明治政府に仕官して以降は、自分が直観で「いいな」と思った知り合いを、重要な場面でポストとして登用した。「人の力を見抜くスキル」は、「お願いだから上司がもっていてほしいスキル」の上位3位以内には入るのではないか。


現代のビジネスにおいても、マネジメントの見本である。

 

事業を営む上では、儲けなければいけない。利益を上げて心が豊かにならないと、道徳心も育つことが難しいことも確かである。

 

でも、道徳を忘れてしまえば、人から嫌われて次の仕事はやってこない。

だからこそ、彼は人との繋がりを余計に大切にしていたのかもしれない。

道徳と経済は、サッカーの“コイントス”のようなもの。
コインの裏表の関係である両者は、どちらが先に来ようと、やることは一緒。

クリーンプレーで、相手のゴールを目指すのみである。

新1万円札紙幣には、あなたが刷られるそうですよ、渋沢さん。

皆さまも、素直な好きを大切に。

 

 

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