『ラップは書くことが9割。パフォーマンスが1割。』
引用:「ジブラの日本語ラップメソッド」/(著・ZEBRA)
上記のフレーズは「ビーツ」という野菜のラップをつくった北海道・愛別町の挑戦を私に連想させる。2019年7月、emotional tribeは北海道愛別町のビーツのラップと動画をプロデュースした。
人生で初めて作詞とレコーディングを経験した。やってみて、意外とすんなり言葉が浮かんだことに自分でも驚いた。それは、今思えば、関わるすべての人たちに明確に伝えたいメッセージがあったからだろう。
「ビーツと愛別町の魅力を世界中の人に知ってほしい」
この想いを、どうやって分かりやすく表現するか。歌詞づくりは新鮮で、仕事の移動中などに連想するイメージと近い音楽を聴きながら、韻を踏むための言葉選びに没頭した。
私は高校生の頃にブレイクダンス、大学生の頃はヒップホップダンスに明け暮れた。ニューヨークのスラム街で起きるギャング抗争、死、ドラッグと密接した生活とは程遠い、日本という世界一安全な国での“なんちゃってヒップホップ”を嗜んだ。
そのため、私のラップは、ZEBRA氏に言わせれば、“本物のヒップホップ”とは認められないかもしれない。それでも、9割…いや9割9分9厘の力をリリック(作詞)づくりに注いだと思う。裏を感じることのできる8ビートとリズム、ピッチにこだわって、ビーツのブレイクビーツは完成した。
「音作り」と「料理」は非常によく似ている。共通して、レシピどおりにつくることがゴールではなく、個性が映える。そして、最後の仕上げが重要となる。作曲はマスタリングという後作業により、音に“風味を加える”ことで劇的に変化するのだ。料理も食卓に並ぶ前の最後の仕上げが、その味わいを左右する点で相似している。
愛別町へ納品後、町の課長から「まぁ、85点ですかね」という評価をいただいた。残りの15点は自分でも薄々気がついている。歌詞づくりは、ビーツの火入れの方法のように奥深い。
「ビーツって、体に良いのだろうけど、調理法が分からないのよね」と、ある先輩の奥様が話していた。なるほど、市場に出回っても購入されることが少ないのは、そういう理由か。
それではemotional tribeが、愛別町で栽培されるビーツの魅力を紹介しよう。北海道愛別町産業振興課さまの全面協力により、ビーツとたくさん対峙した。
今月は、【愛別町産・ビーツ】のある暮らし。
Not only information, but also emotion.
目次
ビーツはカブに見えるけど、実はホウレンソウ科!
ビーツは、カブ?それとも大根か?
実は、どちらでもない。
過去に北海道新聞の女性記者も誤って見出しを掲載したほどビーツの見た目は紛らわしいが、ビート(てんさい糖)とも同じ食べ物ではない。
ビーツは、テーブルビート(Table Beet)とも呼ばれ、ホウレンソウ科の仲間である。
ウクライナの伝統料理「ボルシチ」の紫色は、このビーツに起因する。基本的にはビーツの実を食すが、葉っぱも総菜にして提供する飲食店もある。
愛別町ビーツのラップでも歌われているが「火入れは皮付き調理がベスト」である。蒸すか、ローストをすると糖度がグっと高くなり、栄養素と風味が逃げないからだ。
さて、ここからはビーツを存分に楽しめるメニューを紹介していこう。
北海道・愛別町ビーツを存分に楽しめるメニュー8選
ビーツと豆乳カカオアイスのパフェ
ビーツと豆乳カカオアイスのパフェは、朝食や運動前におすすめ。
ビーツは蒸かしてピューレ(滑らかになるまですり潰した状態)にする。あとは、飲むヨーグルトとアイスクリームにかければ、色鮮やかなビーツボウルが完成。
今回は、ココア味の豆乳アイスクリームを使ってみた。
愛別町産のビーツのブランド「Sweet Beets Box」は、甘さが特徴的。
生産者によると「愛別町のビーツは糖度が非常に高い品種を厳選しており、一般的に出回るビーツのデトロイト種よりも甘みが強い」という。納得!
ビーツときのこの汁なし味噌汁
「朝食は和食でしょ」もしくは「二日酔いなのだけれど今日も会食で飲まないといけない」という時には、胃腸に優しい、ビーツときのこの汁なし味噌汁がおすすめ。
愛別町は、北海道産きのこの80%もの栽培を誇る「きのこの里」で有名な町。
ビーツときのこを同時に使う料理はなかなか難しいと感じられるが、味噌汁であればコラボもしやすい。
紫色に変色してしまうスープは単独でいただき、煮込んだ具材だけを盛りつける。ネギや薬味を最後に入れて、完成。
時鮭・アスパラガス・ビーツの和え物
「翌日に大事な日を控えており、フェイスラインを保ちたい」という時には、むくみを防止してくれるこの料理がおすすめ。
ビーツは蒸かし、枝豆とアスパラガスは素茹でする。あとは鮭をグリルして、和えるだけ。
塩分は鮭に含まれているので追加で塩を添加をしないことで、むくみ防止となる。ビーツはカリウムも豊富なので、塩分の排出を促してくれるため、一石二鳥か。
豚とラムの混浴温泉~ビーツチリソースを添えて~
「運動後に疲れを感じる」「胃腸が弱っている」と感じる時には、疲労回復に効く、豚肉とラム肉~ビーツチリソースを添えて~がおすすめ。
桜もち豚ロースとラム肩ロースを蒸し、ビーツチリソースを添えて完成。油を使わずに調理ができるので、余分な脂肪分をカットできる。
豚肉に含まれるビタミンB1は、体内で糖質をエネルギーへ変換する際に必要となる栄養素で、疲労回復を促す効果がある。
ラムには、肝機能の正常に働かせるオルニチンが含まれており、脂肪分も少ないため、代謝を活性化させてくれる。
さらに、ビーツに含まれるポリフェノールの一種ベタシアニンにより、老化防止に効果があり、健康的なからだづくりを促してくれる。
ビーツの古代米 野菜カレー
ビーツと古代米 野菜カレーは「夏バテで食欲がない」「滋味深いカレーを自宅で食べたい」と感じる時に、ぜひ試していただきたいレシピ。
玄米、黒米、ビーツを一緒に炊き込み、老化防止に効く抗酸化力が滲み出た玄米ご飯をつくる。そこに、玉ねぎ、生姜、にんじん、じゃがいも、トウモロコシを煮込んだ野菜カレーをON。
固形ルウは使わずにスパイスと野菜のみでつくれば、グルテンフリーのカレーができる。
何度も何度も試作をしたけど、カレーって飽きない。夏休みだけ、事務所はカレー屋みたいな薫りだった。
カレー粉とビーツは、キッチンテーブルや衣類などに着色しやすいので、くれぐれも料理する際には気をつけてほしい。
実は、GOO GOO FOOの同じくフードクリエーターである堀池美由紀さんの料理教室でも、愛別町のビーツを使って頂き、「ビーツごはん」をつくっていただいた。堀池さんは、「世界のママの味・アトリエ・フィーゴ」という料理サロンを開かれており、「ご自宅で気軽に素敵なフレンチをつくる」コンセプトで、界隈からファンが多い。いつも素敵な料理記事をあげているので参考にしてほしい。
黒かしわ鶏とビーツの炭火焼き
「お世話になっている方に、背伸びをして料理をふるまいたい」
そんな時には、見た目も華やかな黒かしわ鳥とビーツの炭火焼きが、おすすめ。
蒸かしたビーツと鶏のモモ肉・ムネ肉などをローズマリーで香りをつけて、炭火焼きに。
鶏肉は岩塩のみで味つけをし、ビーツには味をつけないくらいが調度良い。
仕上げに、えごまシードを散りばめて、プチプチした食感をアクセントに。
広島県産あまに牛とビーツのロースト
肉好きの男子・女子の皆さんには、肉とビーツの相性の良さを愉しめるロースト料理をご紹介。
ビーツの料理をこれまでいろいろと試してきたが、ビーツの最大の特徴は「肉を選ばずに調理ができる」ことである。牛肉だけでなく、猪、鹿、鴨、カンガルー肉とも相性が良い。
肉の甘みと相まって、ビーツの個性が最大限に引き出されるのは、シンプルなローストなのかもしれない。
ピスタチオを散りばめてプレート全体の色彩を締めると、より鮮やかな仕上げに。
ビーツと安納芋のマッシュ
「夜にチョット甘いものが食べたいけど、白砂糖を摂りたくない」と感じる時には、ビーツと安納芋のマッシュで、砂糖不使用デザートを。
ビーツは蒸かし、安納芋の焼き芋と一緒にフードプロセッサ―にかけるだけ。
今回はトッピングにカカオ豆を乗せたが、レーズンでも色合いが良いだろう。
砂糖は一切使わない、ギルトフリースイーツの真骨頂か。
編集後記
「いろいろ奪うと、大人ができる」
これは、コピーライターの前田知巳さんがつくった、東芝EMIのキャッチコピー。
ビーツのコンテンツ企画を手掛けるまでの経緯は、このコピーに集約されている気がして、読み直したとき改めてグサリときた。
幼少期、親からソルフェージュスクールに通わされて大嫌いになったピアノ。あのとき何でちゃんと通わなかったのだろうか。私は音符が読めず、コードを知らない。だから、動画を創ったあと、25年ぶりにピアノの体験レッスンに行った。作曲は仕事の幅を広げてくれそうだから。
どうやら私は、6歳で奪われたフリをして、置いてきた何かを見つけに引き返すことになりそうだ。
今回の執筆では、ビーツの生産者、関係者、PVに出演してくれた町の皆さん、大人とは何かを考えさせてくれた山村さんに感謝したい。
皆さんも、素直な「好き」を大切に。
emotional tribe代表 井上嘉文
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