無添加食品プロデューサー「井上嘉文」が提案する【泉州鮮魚・生しらす】のある暮らし

無添加食品プロデューサー「井上嘉文」が提案する【泉州鮮魚・生しらす】のある暮らし
『料理の周りにあるものー立地、ニーズ、客層などーを踏まえたうえで「こんな感じのお店があったら楽しいだろうな」というイメージが先にあり、それならばこんな料理をつくろう、という順序。』

引用:「僕たち、こうして店をつくりました 独立開業のニュースタンダード 著・井川 直子」

上記のフレーズは、大阪府泉州(せんしゅう)にて、生しらすを流通させる数少ない組合を私に連想させる。

泉州で朝獲れした冷凍の生しらすは、“解凍しても鮮度が獲れたてのよう”とPRしている。「またまた…」と思うなかれ、キャッチフレーズをそのままに、鮮度が抜群であることが小島養殖漁業生産組合の取材で証明された。かつて日の出を目に浮かべ漁船で収穫された生しらすは、その日のうちに関西近隣に陸送・東京へ空輸されて出荷されていたこともある。

 

しかし、鮮度を保つ秘訣は流通の早さだけではなく生産現場にあった。取材から感じたことは、収穫の際から“生しらすファースト”なのである。こんな素敵な待遇ならば、生しらすも闇営業することなく、彼らの船で収穫されたいのではないか。

 

圧倒的な鮮度と糖度を誇る生しらすは、もしかしたら「こんな感じの方法でしらすと接すると鮮魚に優しいだろうな」というイメージが先にあり、それならばこんな器具の導入とルールをつくろう、という順序なのかもしれない。

 

それではemotional tribeが、泉州で獲れる生しらすの魅力を紹介しよう。

日本海洋資源開発 ㈱さまの全面協力により、生しらすとたくさん対峙した。

 

 

今月は、【泉州鮮魚・生しらす】のある暮らし。

Not only information, but also emotion.

 

 

 

年間で約100日もしらす漁を!全国有数の港を取材

 

2015年、浜に競り場をつくった岸和田漁湾には、仲買人が48社ほど来るまでに成長した。それもそのはず、生しらすが捕れることで有名な神戸・淡路に引けをとらない水揚げ量があるからだ。

 

水揚げ量は平均しても2~3000盃、多いときは8000盃(1盃=25kgなので約200t)に上る。

 

この母体数の多さから、仲買人からの評価が高いそうだ。生しらすの目利きが1か所で行える上に、好条件の生しらすが手に入りやすいからである。

 

 

68隻の船すべてに搭載。“水に活かされ水に甦る”活水器の工夫

 

減菌作用、鮮度保持の2つの効果をもたらす特別な「活水器」が、すべての漁船に搭載されていることが最大の特徴。

 

これは、世界120か国で国際特許を取得している活水器だ。その活水器を通して得られた水は、マイナスイオンを帯びることで酸化反応を抑制する。そして還元作用で、活性酸素を減少させる効果がある。

 

人間にとっての飲料水としてもポジティブであるが、それは魚にとっても同じだった。水産業にも効果が発揮されることを現場で証明されているそうだ。

 

高精度の活水器の構造は、外側はステンレス、内側は多くのマイナスイオンを発生させる炭素フローレン内部にセラミック、また遠赤外線放射を行う特殊な樹脂が組み込まれている。

 

水道水、海水などをフローレン内を通過させ、微細な泡バブルの発生と小容量の発電などが、マイナスイオンを自然につくっている。電気も磁石も利用していないので、電磁波もおきない。

 

 

 

「スラリーアイス」の活用で、水揚げ後のドリップを削減

 

水揚げ後、しらすを選定してスラリーアイスと呼ばれる氷の中へ。スラリーアイスとは、鮮魚の凍結温度に近い温度で保存することができる、シャーベット状の氷のことである。

 

海水と同様の水でつくったスラリーアイスを用い、船上で水揚げ後にすぐに〆処理をする。

 

適切な温度と塩分濃度がしらすに優しく、栄養や品質の低下を招くドリップを防いでくれる。パッキング前の圧倒的な鮮度を保つことができる秘訣の1つだ。この氷すら、前述したマイナスイオン水なのである。

 

 

 

「アルコール・ブライン凍結」でしらすの鮮度を保持

 

一般的な冷凍保存法は大きく分けて2種類ある。冷たい空気を用いて冷凍させる「エアブラスト凍結」と、液体によって凍らせる「アルコール・ブライン凍結(液体凍結)」だ。

 

しらすに用いられるアルコール・ブライン凍結は、一度に凍らせる表面が広いために、冷凍時間の短縮を促し、鮮度を保持する効果がある。-30℃以下のアルコールで真空パックした後に、10分~13分ほど冷凍をする。エアブラスト凍結の1~2hに対して非常に短い時間だ。

 

ドリップが圧倒的に低い生しらすづくりは、この冷凍方法にもヒントがありそうだ。私は、生しらすの美味しさは「ドリップの出方の差」にあると考えている。

 

日本海洋資源開発株式会社の生しらすは、10時間経過しても、ほぼ漁獲時と変わらない。35時間経過したものは、市販の生しらすは既にドロドロ状態である。この差は、生しらすのおいしさに直結するだろう。

 

 

 

田中さんペアが伝授!美味い生しらすの解凍方法とは?

日本海洋資源開発株式会社の田中一洋さん(写真左)、田中映治 組合長(写真右)

 

生しらすは、実は「パッケージのまま流水解凍」がベスト。100gなら1分、200gならば2分程度で、半解凍くらいの状態で流水につける。そしてザルにあげて氷水で洗浄していくのだ。

 

真空パック前に洗浄をしているので安心であるが、不純物(sea monster)や蟹の子どもなどが入る場合もあるので、洗浄をする。

 

このときの注意点は、氷水がキンキンに冷えていることだ。冷え切らない氷水は身のしまりが緩くなってしまう。

 

冷蔵庫での解凍は、質を下げるそうで…初耳だった。

 

 

 

生しらす・釜揚げしらすのカクテルサラダ

 

教わった解凍方法を、家でも実践。

 

生しらすは、さっと湯引きして釜揚げしらすにした。ワイングラスに大葉、オクラ、かいわれ大根、スプラウトを入れて、生しらすと釜揚げしらすを絨毯にして、うずらの卵をON。

 

本当は中にじゅんさいを入れたかったのだけど…三種町から間に合わず断念。それでも涼し気な1品になった。

 

 

 

2017年、第1回大阪サラメシグランプリに輝いた「しらす丼」

 

2017年の「第1回大阪サラメシグランプリ」にて、1位に輝いた「きんちゃく家」のしらす丼。

 

泉州海鮮「きんちゃく家」は、早朝5時~14時に営業する鮮魚定食屋さんで、実食。11:45を過ぎると既に満席で、行列も出来ていたので11:30がベストか。

 

鎌倉の生しらす丼は、約80gポーションが相場。この店では…ご飯が覆われるほどの生しらすがあるので大満足。

 

コストパフォーマンスが最高で、飲食のメニューで原価率を咄嗟に考えてしまう職業病の皆さんにも嬉しい生しらす丼だ。

 

 

 

編集後記

 

「御社の取り組み、ノウハウをどこまで開示していいですか?」

 

漁師歴40年以上、2船団を経営する田中組合長の取材中に私は質問した。

それだけ泉州生しらすには、美味しい秘訣が隠されている。しかし、当の本人は隠しているつもりもない。

「すべてオープンにしていい」という田中組合長の返答には余裕を感じた。技術を広めて、全体的な質を高めることで、関西の漁業市場の活性化を本気で考えているからだ。

 

「日本海洋資源開発は、生産地でしか食せなかった生のしらすを水揚げ時と同等の品質で全国の方に届けたいという思いで、これまで様々な工夫を重ねてきた。」と田中さんは語ってくれた。

 

その想いと歴史が、「泉州鮮魚」というブランドを見事に水揚げさせたのだ。

 

今回の執筆では、生しらすの新しい発見を促してくれた2名の田中さんに感謝したい。

皆さんも、素直な「好き」を大切に。

 

 

取材協力:日本海洋資源開発株式会社

 

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