お料理クラブパルタージュの竹本です。日常に取り入れて楽しめるフランスの家庭料理をご紹介します。
日に日に春めいてきて、気持ちの良い季節です。
窓から入る光にも暖かさを感じるようになって、春はすぐそこですね。
目次
春とプロヴァンスの香り
3月のフランスには、特別な印象があります。
パリもリヨンも1月から2月は曇りの日が多く、どんよりとした日が続くので、心なしか街の人の顔もこわばって見えていました。それが3月になると灰色の雲が割れて青空から柔らかな日差しが差すようになり、冬眠から覚めた動物が活動を始めるように、公園や堤防沿いに人の姿が戻ります。いつもの街が少しずつ姿を取り戻す、そんな季節です。
そして今の季節、心は少し南の方へ向かいます。
プロヴァンスでミモザの黄色い花が咲き乱れる様子が伝えられると、プロヴァンスのラベンダーやハーブが香るような気がして、プロヴァンス料理の本を本棚から出してみる、そんな人が沢山いるようです。
今回は今の季節に作りたい、プロヴァンス風の牛の赤ワイン煮込みをご紹介します。
ハーブが香る牛の赤ワイン煮込み
フランスにはいくつか牛肉をワインで煮込む料理があります。
有名なものがブルゴーニュのブッフ・ブルギニョンですが、ブルギニョンがバターを使って濃厚に仕上げるのに対して、プロヴァンスの赤ワイン煮込みはオリーブオイルを使って軽く仕上げます。さらにハーブと一緒に煮込むのもプロヴァンス風。
この料理、正確な名前は”daube de bœuf”(ドーブ・ド・ブッフ)というのですが、”ドーブ”はプロヴァンス地方の言葉で”準備をする・用意をする”といった意味の言葉から来ています(”ブッフ”はフランス語で”牛肉”です)。プロヴァンス地方は牛を育てるのに適した地形ではないそうですが、昔この辺りで盛んだった闘牛の廃牛を美味しく食べるために作られた料理という説があります。
お肉も脂の少ない部位を使うと、見た目よりもずっと軽くさっぱりとした仕上がりに。週末のちょっとこだわり料理にぴったりです。
プロヴァンス風 牛の赤ワイン煮込みの材料(2人分)
材料<2人分> | 分量 |
---|---|
牛肉(煮込用) | 200g〜300g |
赤ワイン(ペットボトルのものでOK) | 500ml |
玉ねぎ | 小1個 |
人参 | 小1本 |
薄力粉 | 大さじ1 |
ニンニク | 1〜2片 |
ブーケガルニ | 1つ |
クローブ | 4粒 |
黒胡椒 | 5粒 |
塩 | 適量 |
*オリーブオイル適量と、お好みで無農薬のオレンジの皮適量かマーマレードをほんの少しご用意ください。
煮込用の牛肉はあらかじめブーケガルニと一緒に赤ワインに漬けておきます。24時間が目安です(肉が固くなるので塩は入れません)。ミディアムボディやフルボディの赤ワインよりも、フルーティーな軽いものの方がこの料理にはオススメです。
ブーケガルニというのは、プロヴァンス料理に欠かせないハーブを束にしたものです。
ローリエ、タイム、パセリ、セロリあたりがよく束にされています。フレッシュなものが一番ですが、乾燥のものでも十分香りは立ちます。
最近はスーパーで見かけるようになってきましたが、見つからない場合は、ローリエやタイムなど1〜2種類だけのハーブを使用してもOKです。パセリの茎やセロリの葉が冷蔵庫にある人は、それを加えても。
クローブと黒胡椒です。
クローブはフランス語で”clous de girofle”(クル・ド・ジローフル)。”クル”は”釘”の意味で、「丁子の釘」という意味です。名前の通り釘のように先が尖っているので、食材に刺して香りを移すことがあります。
クローブは胡椒やナツメグのように日常的にたくさん使うスパイスではないかもしれません。買っても使わないのでは?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、パエリアやポトフにいくつか入れるだけで一気に現地の味の雰囲気が出るので、お料理が好きな方は買って損はないと思います(無くてもOKですが黒胡椒はできれば加えてください)。
プロヴァンス風 牛の赤ワイン煮込みの作り方
人参を斜めに切り、ニンニクを包丁の背でつぶします。
玉ねぎを4つに切って、それぞれにクローブを刺します。
今回は出始めの新玉ねぎを使いました。甘くて美味しいはず。
牛肉を赤ワインとブーケガルニで漬けている袋に野菜を全て加え、2時間ほど冷蔵庫におきます。
ざるで赤ワインと具材を分け(ワインは捨てない)、具材だけを先にオリーブオイルで加熱します。全体的に油が回ったら薄力粉を加え、焦がさない程度に炒めます。
漬け用の赤ワイン全量と、塩を少々加えます。ここで無農薬栽培のオレンジの皮の表面の部分を5cmほどピーラーで剥いて加えるか、マーマレードを小さじ1杯ほど加えるとさらにプロヴァンスの味に近付きます。
1時間ほどコトコト煮て、お肉が柔らかくなったら出来上がり。
シンプルな料理なので、お肉の美味しさが料理の味を決めるところがあります。物足りないなと感じたら、顆粒ブイヨンをほんの少し加えてもいいと思います。
ブーケガルニとオレンジの皮を取り除いて、塩で味を整えたら食卓へ。
付け合わせはジャガイモのピュレや、タリアテッレを柔らかくなるまで湯がいたものがオススメです。
春本番を前に、プロヴァンスの味を食卓にいかがですか。
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