目指すのは、適正評価される市場作り。永山氏、中山氏が込める和牛への想い

目指すのは、適正評価される市場作り。永山氏、中山氏が込める和牛への想い

世界で認知度が高まる日本の「WAGYU」。

 

今回は、そんな渦中におられる和牛界の風雲児、

 

  • 「WAGYUMAFIA」の料理長を務める永山俊志さん

 

  • 株式会社Meattech CEOの中山智博さん

 

のお二人にお話を伺った。

 

 

  • 和牛の道を志した経緯
  • 事業展開の失敗談・成功談
  • 今後の目指すべき業界の未来

などなど、彼らに熱く語っていただいきました。

 

 

 

和牛との出会いとこの道を志そうと思ったきっかけとは?

――:永山さんは「WAGYUMAFIA」で料理長を務めておられます。もともとは、どのようなキッカケで和牛の道を志したのでしょうか?

 

 

永山さん:もともと高校生の時から音楽をしていたので、ミュージシャンを目指して上京しました。ミュージシャンとしての将来性に不安を抱き、万が一に備えて調理師免許を取ることを決めました。

 

その時の調理師専門学校が「焼肉モランボン」が経営している専門学校でしたので、珍しく朝鮮料理専攻科がありました。

 

当時お世話になった講師の方が焼き肉屋を経営されていて、店舗を増やすというきっかけで声をかけていただいたのが始まりです。牛肉の知識は全くなかったので、働いてから教えて頂いたことが多いです。

 

当時は、芝浦の食肉市場へ毎朝7年間買い付けに行ったりもしました。その時のご縁がなければ、今の自分はいなかったと思います。

 

 

――:中山さんは現在、株式会社MeattechのCEOとして、畜産業界にITテクノロジーやバイオテクノロジーを利用することにより、牛肉の適正な流通(ディストリビューションの再構築)と新たな価値基準の生成を目指しておられます。中山さんが今の和牛の道を志した経緯について、お伺いさせてください。

 

 

中山さん:私は大学時代、農学部に在籍していました。大学卒業後、「ソニー」や「エス・エム・エス」でウェブマーケティングの仕事に就き、テクノロジー業界への道を歩もうと考えていました。

 

和牛の道を志したキッカケは、畜産業界における様々な疑問を抱いたことです。たとえば、ジャージー牛と黒毛和牛を掛け合わせた牛は、霜降りが入りにくく体重が増えないために、どんなに美味しい肉であっても結果的に高い値が付かないという適正評価がなされていません。

 

牧場から卸へいけば、どこに行くか分からないという現状や、消費者の方がその肉を食べたいと思っても経済として成り立たない、というジレンマが起きていました。

 

コーヒー豆やワインは、農場を指定するシングルオリジンと呼ばれるトレンドが来ているにも関わらず、牛肉には見当たりません。牧場からダイレクトに購入できる市場をテクノロジーを使って創りたいと思い、起業を決意しました。

 

※シングルオリジンとは、生産国やエリア、収穫時期、生産者、品種、流通経路などがある程度まで特定できるの事である。

 

 

 

過去の経験で辛かったこと

――:中山さんは、情報業界から畜産業界へと転身されました。大きな変化のように思われますが、実際に辛かったご経験はございますか?

 

 

中山さん:初めの1年は、「牛が生きていること」への理解ができていない時期がありました。世の中では、インターネットで注文をした商品が翌日には届きますよね。でも、畜産業では生きている在庫を扱っているので、オーダーを頂いてから食肉の処理が始まります。

 

9,000頭いるので在庫が多いようにも感じますが、実際、肉の状態で保有している在庫は一切ありません。1頭をお届けできる状態にするには、3~4日要します。畜産と卸の関係を分かっていない時期は、色々と失敗や反省を経験しました。

 

 

――:永山さんの過去に辛かったご経験はいかがでしょうか?

 

 

永山さん:BES問題により、飲食店で生レバーが扱えなくなってしまったことです。1頭の牛から8~10キロものレバーが取れるため、毎日数百キロと大量に廃棄されるようになりました。

 

食品衛生法違反の疑いで、焼肉屋さんが逮捕される事件もありましたよね。牛のレバーは過熱をすると、鳥や豚よりも匂いが出てしまいます。

 

美味しい部位が破棄されなければならない現状を、「何とかしたいけれど何ともできない」という悩みを抱えて、試行錯誤を続けています。

 

 

 

海外へ事業展開をする理由とは

――:永山さんは「和牛を海外へ」というコンセプトを掲げ、WAGYUMAFIAさんをされています。海外展開に目を向けた理由についてお聞かせください。

 

 

永山さん:海外展開の理由は、価値の適正評価がなされる市場を創るためです。現在、日本の飲食店は安さを重視する風潮があると感じています。価値が安いと飲食店の儲けが悪くなり、仕入れ値を下げなければならず、最終的に負担がかかるのが生産者の方です。

 

結果、生産者さんの後継者問題にも繋がってしまいます。牛に限らず日本の第一次産業は途絶えてしまうような危機感さえ感じています。

 

 

永山さん:海外の方の和牛における評価基準は非常に高く、価値のあるものを適正評価してくださる方が多いように感じています。価値を正しく評価してくださる方に、本物の良いものを提供することのできる市場をしっかりと創らなければという使命感を抱いています。

 

 

――:なかやま牧場さんは海外展開を考えておられますか?

 

 

中山さん:最近は特に、海外の市場を意識するようになりました。日本では3600万人が高齢者という避けられない少子高齢化少問題が起きています。今までと同じような規模を維持することが難しいことが予想できます。

 

現在は、タイ・マカオ・バンコク・台湾における市場調査を始めています。松坂牛・神戸ビーフ・米沢牛などのブランド名の無い和牛でも、元々の知名度が日本より低く、味で勝負できるため、海外展開のチャンスは十分にあると期待しています。

 

 

 

過去の事業展開で上手くいったこと

 

――:経営者として活躍されているお二人ですが、過去の事業展開の施作でうまくいったことを教えてください。

 

永山さん:海外での和牛の認知度が高まるブームに、WAGYUMAFIAが上手に乗ることができたことです。

 

近年では、横文字の「WAGYU」という言葉は高級和牛の代名詞として用いられるようになりました。

 

オーストラリアやメキシコでは海外産の和牛が生産されていますが、日本産和牛の認知度は非常に高く、海外イベントなどでは活気があります。この流れに乗ることができたので、和牛マフィアが世界で知名度を上げられたと感じています。

 
 
 
 
 
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――:具体的にどのような経緯で、WAGYUMAFIAさんが海外で認知され始めたのですか?

 

永山さん:仕事仲間の浜田寿人さんが、海外経験を長くお持ちで。様々な人脈を広げて世界へアピールしてくれたことがきっかけです。世界で和牛が広まるタイミングに上手くリンクでき、海外での知名度を上げることができたように思います。

 
 
 
 
 
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――:WAGYUMAFIAさんが具体的に行っている認知活動はございますか?

 

永山さん:情報をどれだけ発信できるかという点に注力しています。世界で活躍されているシェフの方や、著名人の方に、インスタグラムに写真を載せてアピールしていただきました。インスタグラムでの投稿は世界中の方に知ってもらえるように、言語を英語にするなどの心がけをしています。

 

 

 

現在、事業展開で注力していること

――:中山さんが現在力を入れているのは、どのような事業でしょうか?

 

 

中山さん:牛の価値を高めるために、アミノ酸解析や脂肪酸解析などの研究に注力しています。たとえば、牛の酸味の強さなどを誰の目でもわかるように数値化することを取り組んでいます。

出典元:meat tech Inc.

 

――:永山さんが現在、事業展開で力を入れていることについて教えてください。

 

永山さん:一つは、美味しい料理を作ること。もう一つは、海外の方が利用しやすい環境を整えることです。予約のしやすさや、英語での接客方法などに重点を置いています。

 

 

 

実現したい和牛の未来とは

 

――:お二人が実現したい未来とは、和牛が適正価格で評価される市場や流通を創ることですね!

 

永山さん:そうですね。今後、和牛の価値が高まるにつれて、誰でも食べられる食材では無くなってくる可能性があると思っています。ただ、皆さんにはぜひ食べてもらいたい。矛盾する流通の枠組みを、どう創っていくかというのが僕らの仕事です。

 

中山さん:世界を見れば、和牛の種が流出し、オーストラリアでの低コストでの掛け合わせの和牛が大量に生産されています。しかし、本物は本物として適正評価される市場を創っておかなければ差異化すらできず、本来の価値が伝わりません。あのお店へ行けば本物が食べられる、という最終消費までの流れを創りたいです。

 

――:中山さん、永山さん、最後まで貴重なお話をありがとうございました!

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