世界で認知度が高まる日本の「WAGYU」。
今回は、そんな渦中におられる和牛界の風雲児、
- 「WAGYUMAFIA」の料理長を務める永山俊志さん
- 株式会社Meattech CEOの中山智博さん
のお二人にお話を伺いました。
- 和牛を使った意外なレシピ
- 家庭でお肉を焼く時のポイント
- なかやま牧場さんでの食育環境や生態環境
などなど、プロのお二人に熱く語っていただきました!
目次
和牛に合う食材やレシピについて
――:和牛に合う食材や一押しのメニューについてお伺いさせてください。
永山さん:和牛は旨味の強い食材なので、色々な料理に合うと思っています。肉じゃがやすき焼きにも合いますが、その他にも、マニアックな料理に合わせることもできるバリエーション豊富な食材です。
――:マニアックな料理とは、具体的にどのようなレシピでしょうか?
永山さん:例えば、醤油べースで煮込んだ和牛に、新タマネギで作ったムースを添えるレシピです。シンプルですが非常に美味しいです。
他には、カツオの酒盗をお酒でボイルし塩味を出します。これを、クリームチーズと混ぜ合わせてお肉に塗って焼いて食べる料理も絶品です。
最近では、デザートに和牛を入れるレシピついて発案しています。
今月のWAGYUMAFIAのメニューは、和牛のアキレス腱を煮込んで柔らかくしたものを、パッションフルーツと一緒にさらに煮込み、甘みと酸味を引き出します。最後に、パッションフルーツを白玉団子に包み、上からマンゴーソースをかけるデザートです。
食感が特徴的で、ナタデココが入っていると思われるお客様が多いようです。こちらも非常に人気のあるメニューです。
中山さん:アキレス腱は、意外と使いどころが難しい部位なんですよね。筋煮込み料理以外で、それも、デザートの料理とは面白いですね!
――:中山さんの和牛の美味しい食材やレシピは、いかがでしょうか?
中山さん:私は牧場を経営しているので、お肉の味をメインで引き立たせる調理法が多いです。シイタケやマツタケなどのキノコ類は、非常に相性が良いと思っています。
永山シェフがメニューに酒盗を使っておられた話もそうですが、全体のバランスを設計された料理は凄いなと思います。
中山さん:たとえば、肉のインパクトが弱いと感じたらバターを加えてコクを強めてみたり、全体のコクが強いときは酸味を加えてさっぱりに仕上げ、肉の脂の香りがしっかり残るようにしたり。肉のポテンシャルに対して見事な合わせ方をしている料理は、美味しいと感じますね。
――:永山さんのお店では、毎月旬の食材を使ったメニューを10品お出しされていると伺いました。
永山さん:そうですね。私のお店では、毎月メニューを10品お出ししていて、そのうち7品は新しいメニューです。毎月メニューを変えているので、必死で試行錯誤しています。お店をオープンした当時は、最初の12か月は大変だろうけど翌年からは1年分のメニューがあるから大丈夫、と思っていたんです。
でも、翌年になると物足りなくなってしまって。同じメニューではつまらないので、料理を毎回進化させることに楽しさを感じながら、季節の食材を用いたメニューを考えています。昔のメニューと全く同じものをお出しすることは、ほぼ無いですね。
――:毎月7品もの新メニューが出るとは、驚きました。WAGYUMAFIAさんは会員制ですが、ぜひ行ってみたいです!
家庭で焼く時に肉が固くならないポイントとは?
――:googoofooの読者さんからのご質問です。
「時々、和牛を買うのですが、焼いたら固くなってしまいます。家庭でできるお肉の美味しい焼き方やポイントを知りたいです。」
永山さん:肉が固くなるメカニズムを分かりやすく表現すると、焼くときの温度が関わっています。ご家庭で焼くのであれば、火を入れ過ぎないことがポイント。
肉の厚さにもよるので一概にどれくらいとお伝えするのは難しいのですが、火を入れ過ぎないことが大切です。
絶対に失敗しない!?家庭でできる美味しい肉の焼き方
――:和牛を固くしないためには火加減の調節が大切とお伺いしました。ちなみに、蓋をして加熱する場合のアドバイスはありますか?
永山さん:蓋をして蒸気で焼く場合は、前もってお肉を常温に戻して置くことをおすすめします。蓋をすることによってフライパンの温度が上がり、短時間で焼くことのできるメリットがあるのですが、中まで火が入りにくいデメリットもあるからです。
冷蔵庫から出したばかりの肉は中が冷たいままなので、30分程度常温で戻しておくと良いですよ。
――:永山さんのお店では、どのようにお肉を焼かれていますか?
永山さん:私のお店では、冷蔵庫から出したお肉を常温に戻さずに、じっくりと時間をかけて焼きます。炭火は温度が高いので、表面を焼いたら少し休ませることを何度も繰り返しながら、中までふんわり火を通すようにしています。
――:中山さんがお肉を焼く際は、どのような点に気を付けておられますか?
中山さん:部位によって調理の仕方を変えるようにしています。たとえば、サーロインやリブロースは、脂は乗っていますが比較的レアでも食べれる部位です。柔らかさもあるので、筋をしっかりと除いておけば固くなりにくい特徴もあります。買う部位によって調理の仕方を変えるように意識するといいかなと思います。
――:誰でも失敗のない、美味しく簡単に焼ける方法はありますか?
中山さん:誰でも失敗しないという点では、真空低温調理がおすすめです。真空低温調理機を59度に設定し、ジップロックに入れた和牛を入れておけば、ある程度のタンパク質が変性します。その後にフライパンで火を通せば美味しく仕上がり、失敗は少ないと言えるでしょう。
なかやま牧場さんの牛の食育や生態環境について
――:話は料理から一転しますが、なかやま牧場さんの牛は、どのような食育環境で育っているのでしょうか?
中山さん:なかやま牧場では合計約9,000頭肥育しており、和牛、交雑種、ホルスタインと呼ばれる乳用種の3種類を育てています。「肥育環境を動物に配慮しよう」という、欧州発の考え方アニマルウェルフェアを採用しており、動物にストレスを与えない育て方を目指している牧場です。
中山さん:肉の色をキレイにしたり、脂肪を入れようとするために、敢えてビタミンやタンパク質を与えない育て方というのがありますが、なかやま牧場では制限をしないようにしています。栄養豊富な質の良い飼料を与えているので、脂肪が入りにくいために肉質がやわらかくサラッとした味わいで、コクのある肉本来の色を引き出せている点が特徴です。
――:牛の角を切らない育て方を意識しているとお聞きしました。
なかやま牧場で肥育されておられる「なかやま牛」
中山さん:はい。牛の角を切ることを「徐角(じょかく)」と言うのですが、なかやま牧場では9,000頭全てを徐角せずに育てています。通常、牛を狭いスペースで大量に育てるために徐角をします。牛がストレスを抱えると、横の牛を突いてしまうので。
中山さん:しかし、角を切られた牛は残りの肥育される24カ月間ずっと人間を恐れてしまい、食にむらが出てきてしまう傾向があります。すると、同じ牛舎の牛でも、良い肉と悪い肉の差が生まれる原因に繋がってしまいます。
なかやま牧場では、広い牧場の敷地面積を確保し、徐角をせずに牛を育てるよう意識をしています。9,000頭という大規模なので、非常に珍しい牧場だと思っています。
牛はストレスが溜まると鳴くので、ストレスのない環境で肥育しているなかやま牧場は、静かな牧場です。
対談後、なかやま牧場のテレビCMを取材陣一同で拝見したところ、牛が鳴いていると談笑しました。
テクノロジーを駆使した牛の管理法
――:9,000頭とは大規模ですね。牛の管理はどのようにされておられるのでしょうか?
中山さん:「ファームノート」というウェブツールを用いて、クラウド上で全て管理しています。今日一日でどれくらい食べたかという残食量などもデータ化しています。生産から流通までを管理することも可能なので、出荷後の管理も十分に整っています。
永山さん:膨大な作業ではないでしょうか?
中山さん:1日50人働いていて、ひとり当たり300頭管理しています。データ入力をする人だけでも、常に3人はいるんです。ずっと1日中入力作業をしているので異常な光景だと思いますよ。以前、見学に来られた方は驚かれてましたね。
――:今後、世の中に発信されたいことをお伺いさせてください。
中山さん:栄養豊富な飼料を与えて徐角をしない、牛にストレスを与えない肥育の価値観を受け入れてくださる市場を開拓していきたいです。
ヨーロッパでは動物愛護の厳しい視点を持っている方が多いので、なかやま牧場がアニマルウエルフェアの価値観を持っていることを世界的にも発信できたらと思っています。
――:中山さん、永山さん貴重なお話をありがとうございました!